

まこ、めめ、レナ、はっちゃん。こんな名前のアイドルたちをご存じでしょうか。知っているなら、かなりの通。何の通って、ネコの通。そう彼らは、アイドルはアイドルでも、みんなネコ。本屋には彼らの写真集が特設コーナーに並び、その人気のほどを見せつけています。ネットの世界では、土鍋の中で寄り添って眠るネコの様子を捉えた「ねこ鍋」や、広島のとある無人駅で、自動改札機の上に横たわる「えきねこ」などが話題になったのも記憶に新しい。さらには、本物のネコたちが出迎えてくれる「猫カフェ」も急増中で、女性を中心としてネコに注目が集まっているのです。
こんな時期に公開されるのが、映画『ネコナデ』。主人公は、生き馬の目を抜くIT企業のリストラ担当部長、鬼塚。本当は胃薬を飲み飲み仕事をしているのですが、顔色ひとつ変えずに人を斬ることから周囲からは誤解され、冷淡な人というレッテルを貼られています。そんな彼が、帰宅途中で出会ったのが、一匹の捨てネコ。我が子には日頃から「ちゃんと面倒を見られないなら、無責任に生き物を飼ってはいけない」と言っているだけに、初めは連れ帰るつもりなどさらさらなかったのですが、あまりに可愛い姿に完敗。でも、父の威厳を保つため、家には連れて帰れない。そこで、会社が研修所として使っているマンションの空き室でこっそり育て始めるのです。トラという名前をつけて。
この映画の凄いところは、プロが集まる試写会で、上映中に女性たちからざわめきやつぶやきが起こった点。出演ネコのトラ登場シーンで、思わず「可愛いっ」と声を出してしまった人、「うーっ」と声が漏れた人複数。さらには、「可愛いわね」と囁き合う声まで聞こえる異常事態が発生していたのでした。やはりネコ好きは多いのでしょうか。
ところで、動物はお好きですか? この質問は単純ですが、その割に答えは、YESかNOかでは済ませられないほど複雑です。例えば、好きにもいろいろ。一緒に暮らしているほど好き。好きだから飼いたくない。別にそれほど好きじゃないけど、飼っている我がペットだけは可愛い。嫌いだけど地域ネコ(町内で面倒を見ているネコのこと)を世話している……など。そもそも動物との関わりというのは、“好きか嫌いか”ではなく、“相手に敬意を払うかどうか”が大前提となるのかもしれません。人間と接するのとまったく同じ。好きだからといって何でもOKというわけではないし、嫌いだからといって完全に排除はできないのですから。
『ネコナデ』の鬼塚は、まさに動物の命に敬意を払うタイプの人物。特に動物好きというわけではありません。でも、仔猫と出会い、その可愛さにノックアウトされると、仕事でガチガチに固まってしまった心がほぐされていくのです。動物に人を癒すチカラがあることは、アニマル・セラピーでも実証済みですよね。セラピーで効果を感じている人々が必ずしも動物好きではないことを考えると、なんだか不思議。動物が特に好きではないという人の多くは、鬼塚のように、これまで生き物と深く触れ合う機会がなかっただけなのかもしれません。そんな人が、ふとしたきっかけで動物を好意的に意識し始める……。そんな瞬間を描いた本作では、仕事上は非情にも人材を斬り捨てているけれど、動物との触れ合いを通じて実は人情派だというところも見え隠れする。“目覚め”とともに柔らかく変化していくオジサマの姿が、キュートなネコと同様に、なんとも母性本能をくすぐるのです。

「動物はとことん苦手!」という方には無縁かもしれませんが、動物好きや、潜在的な動物好き、そしてアニマル・セラピーを求めている人には、もってこいのこの『ネコナデ』。興味アリという方は、「観に行きたいんだけど、おじさん一人じゃ恥ずかしいから、一緒に行って!」とネコナデ声で、気になる女性へ素直にお願いするのもありかもしれませんね。
映画ライター。通信社、映画祭事務局、webマガジンの編集部を経てフリーに。
映画そのものの話題はもちろん、周辺ネタを追いかけるのが好き。
現在は女性誌を中心に映画紹介、インタビュー記事を執筆。

6月28日より、渋谷Q-AXシネマ他にて全国一斉ロードショー
上映時間:1時間25分
配給:AMGエンタテインメント
公式HP:http://nekonade.info
(C)『ネコナデ』製作委員会
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