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映画コラム 女の目線
オジサマだって、観たいでしょ 『ネコナデ』
ネコナデ

 女性を食事に誘うとき、もしくは女性にちょっとしたプレゼントを贈るとき、絶対に外さない法則があるのをご存じですか? 好みを知っているならそれに従えばいいけれど、もしも悩んでしまったら、試してみても損はないはず。食事ならば、美しく盛り付けられた料理が少しずつ登場する懐石料理を。プレゼントを贈るなら、フィリングも様々な小さな粒チョコレートの詰め合わせを。これ、かなり喜ばれる可能性大です。キーワードは、“最良のものを、ちょっとずつ”。もちろん、ガッツリ大きい塊でいただいたほうがいいものもありますが(宝石とか!?)、消えてなくなるもの、特に一度にたくさん味わえない食べ物系なら、ひたすら同じものをいただくよりも、色々なものをちょっとずつ味わう形式が嬉しい。女性がブッフェ好きなのもそんな心理の表れです。

 女性という生き物はかなり欲張り。女性同士や気心の知れた仲間で食事に行くと、それぞれ注文したものが違ったりすると「ちょっとちょうだい」と言い合って、ひと口ずつ味見をし合うのが常。男性から見れば異様な光景かもしれませんが、自分が食べている美味しいものをぜひ相手にも食べてほしい、私もその美味しそうなものを食べてみたいという、本能的な欲望の表れ。互いに味見をした後は、「それも美味しいね」などとさらに会話が弾むのですから無邪気なものです。

 質の良いものを、ちょっとずつ楽しむ。それならば、映画も。今回ご紹介する『それぞれのシネマ』は、まさにそんな女性の望みを叶えてくれる作品です。これは、第60回目の開催を記念して、カンヌ国際映画祭がゆかりのある監督たちに映画製作を依頼したことから生まれたオムニバス作品。泣く子も黙る世界的巨匠たちが、映画への愛を思いのままに詰め込みました。共通するお題は、「あなたにとって“映画館”とは何か、自由なイマジネーションで短編映画を作ってください。ただし、制限時間は3分間で……」というもの。参加したのは、北野武をはじめとする33人。一作品が終了するまで監督名は明かされないので、先入観を持たずに映画を楽しめるのも、味のわからないチョコレートを一粒一粒口に入れていくようなサプライズがあって、とてもエキサイティング。それに、「この作品、いい感じ」と思ったものがお気に入りの監督の作品だったりすると、テイスティングをしていてぴたりと銘柄を言い当てたときのような満足感に浸ることもできます。私の場合、マノエル・ド・オリヴェイラ、アレハンドロ・ゴンザレス・イニャリトゥ、クロード・ルルーシュ、ケン・ローチ、デヴィッド・リンチ、ナンニ・モレッティなど、好みの監督の作品にしっかりピンと来ていたのでびっくり。それもこれも、3分間という短い時間にも、巨匠たちが自分の作家性をしっかりにじませることに成功しているからなのです。凄い!

ネコナデ
 この映画なら、こだわりの強い女性でもきっと満足できるはず。どの作品が面白かったかという議論が始まれば、終演後に話題が尽きることはなさそう。映画について語り合ううち、「この人、こういう作品が好きだったんだ」と、お互いの知られざる一面を知るきっかけが生まれることでしょう。

 これを機に、女性が好みそうな“ちょっとずつだけど、最良のもの”を、探してみるのもいいかもしれません。最近では、有名レストランでも、美味しい料理をちょこっとずつ盛り合わせた前菜を用意していたりします。人気が集まっている「アペリティーボ」も素敵。アペリティーボとは、イタリアで定着している新習慣。仕事を終えた18時から20時頃までの夕食前のひとときに、バールなどでゆったりとお酒と軽い食事を楽しむもの。軽い食事とはいっても、食にうるさいイタリア人のことですから、量も質もそれなりの基準を保っていて、かなりの満足感が得られます。数年前から日本にも上陸していますが、おすすめは表参道のSINとブルガリのイル カフェのアペリティーボ。イル カフェでは、18時を過ぎてからお酒をオーダーすると、アペリティーボが楽しめるサプライズサービスを実施。お酒の進み具合に合わせて、一流シェフが手がける小皿料理が登場します。小皿料理といっても、本格イタリアン。ゆっくりグラスを傾けていれば、“小さなフルコース”と呼べるほどの品数が供されるので、女性なら絶対に喜ぶはずです。ちなみに、カフェに併設されたイル チョコラート(チョコレートショップ)では、“ちょっとずつ、良いものを”の最たるもの、ブルガリロゴが入った一粒1500円のチョコレートも。しかも、ジュエリーケースのようなパッケージが素敵なのです!

 一方、フランスでも、気軽な「ビストロ」で一流の美食「ガストロノミー」を堪能しようというスタイル「ビストロノミー」が話題とか。日本にもこのスタイルが紹介され始めていて、イタリア式のアペリティーボに匹敵する、ビストロノミー風おつまみでアペリティフを楽しむハッピーアワーも登場。パリに本店を構えるル・プレヴェール東京などはその先駆者的存在。『それぞれのシネマ』で最良のものをちょっとずつ楽しんだら、わがままな女性の胃袋も楽しませてあげてくださいませ。

【筆者プロフィール】
牧口じゅん
映画ライター。通信社、映画祭事務局、webマガジンの編集部を経てフリーに。
映画そのものの話題はもちろん、周辺ネタを追いかけるのが好き。
現在は女性誌を中心に映画紹介、インタビュー記事を執筆。

【映画データ】
ネコナデ
『それぞれのシネマ』
8月2日より、渋谷ユーロスペースにて公開以降、
名古屋シネマテーク、梅田ガーデンシネマ、札幌シアター・キノにて順次公開
上映時間:1時間54分
配給:オフィス北野
公式HP:http://sorezore.asmik-ace.co.jp/
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