

アール・ジーン、ジューシー、ジョーズ、ブルーカルト、ロック&リパブリック……。相変わらず、大人の女性たちに人気のプレミアムデニム。カット、シルエット、風合いにこだわった作りが魅力です。美脚効果抜群という点も、“流行”を通り越して、“必須アイテム”に落ち着いた理由のひとつ。そもそも、ハリウッドのセレブリティたちから火がついたもので、きれいなカジュアル=L.A.カジュアルの代名詞です。プレミアムというだけあって、お値段は平均して3万円前後と少々高め。それでも、バブルを生きた者たちは、抵抗も感じず、つい購入してしまいます。
ところが、最近はこのプレミアムデニムが、以前ほど売れなくなっているようなのです。それは、デニムを好み、何本も所有していると思われる若者たちが、さほど興味を示さないから。今や、流行のスタイルが、手頃な価格で揃ってしまう時代。スキニーも、ワイドも、ブラックも、ブーツカットも、3千円あれば買える●二クロ慣れした世代にしてみれば、「そんな高いもの、買いません」というわけ。かなり堅実なのです。
実は、今の20代がかなり堅実であることを、最近になって複数の人から別々に聞かされたばかり。“複数の人”とはマーケティングのリサーチをしている人、女性誌の編集者、広告代理店の人々ら、時代を捉えるプロたちです。彼らが口を揃えるには、今の20代の多くが、高級ブランドにさほど興味がないと発言しているのだとか。雑誌にそれらが掲載されていても、見ないそう。どうせ買えないから……と諦めているのではなく、「興味がないから、はなから見ない」のだそうです。確かに、最近では若い女性が海外高級ブランドのバッグをこれ見よがしに持っているという、バブル期にはごく普通だった光景もあまり見かけなくなりました。車も同じ。外車はおろか、そもそも車を持つことにあまり興味を示さないと聞きます。ここまで価値観が違うとなると、海外高級ブランド=かっこいい、というノリで話を展開した際には「は? おじさん、何言ってるの」と、バブル時代の化石のように扱われる可能性もありますので充分にご注意ください。

そんなことを改めて考えさせてくれたのが、ドキュメンタリー映画『女工哀歌』。哀歌と書いて、“エレジー”と読みます。なんだか、レトロな雰囲気ですね。この作品は、世界の市場を支える中国のデニム工場を舞台に、そこで働く少女たちの数ヶ月を追っています。彼女たちの平均年齢は15歳。ほとんどが、地方の貧しい農村からの出稼ぎ者。時給はわずか7円で、1日の労働時間は18時間。彼女たちの過酷な日々を作り出しているのは、言わずと知れた先進国。工場にしてみれば、国際労働基準法に違反せずして海外メーカーの要求には応えられず、競争に勝てないというわけなのです。
これほどの我慢を強いられて、さらには給料が遅れたり、賃金を踏み倒されたり、素行が悪いと言いがかりをつけられ罰金を没収されたりと、工場側の勝手なこと。それでいて、「うちの工場は民主的だ、権利も充分に認めている。生活に必要なもの(部屋、トイレ、食事)は与えているんだから」と開き直る。酷いです。でも、そこまでやらせているのは、過酷な競争を強いる先進国、さらには安いものを望む先進国の消費者なのですから、問題は世界規模で複雑なのです。
これを解決するのは、そう簡単ではありません。この作品を観たからといって、何かが大きく変わるわけではないでしょう。でも、高いデニムを穿くオジサマも、安いデニムを穿く若い娘も、私たちの服を日夜縫ってくれている誰かについて知り、一緒に考えてみる良い機会にはなるはずです。ここから感じるモノの価値、デニムを通して見る世界。なかなか胸に染みますよ。
最後に、『女工哀歌』の少女たちが、悲惨な毎日ばかりを送っているわけではないことも、ご報告しておきましょう。ちゃんと怒ったり、工場に抗議したり、寮でファッションショーをしてみたり、しっかり恋をしていたり。明日への希望が見え隠れしているので、あまり構えずにご覧になってみてくださいませ。
映画ライター。通信社、映画祭事務局、webマガジンの編集部を経てフリーに。
映画そのものの話題はもちろん、周辺ネタを追いかけるのが好き。
現在は女性誌を中心に映画紹介、インタビュー記事を執筆。

渋谷シアター・イメージフォーラムほかにて現在公開中
上映時間:1時間28分
配給:エスパース・サロウ
公式HP:http://www.espace-sarou.co.jp/jokou/
(C)2005 Teddy Bear Films
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