2009.02.16UP
70年代から80年代にかけて発表されたアナログの、LPアルバムのCD化も一段落した後をうけて、数年前から紙ジャケの復刻盤が次々と登場するようになった。
画一的なプラスティック・ケースが味気ない、ということへの反動もあるかも知れないが、発売当時のアート・ワークを忠実に再現した紙ジャケの復刻は、個人的にも多少の御利益をもたらしてくれる。復刻盤には原則として発売当時の解説(ライナー・ノーツ)も再録されるからである。
サンタナ、ロクシー・ミュージック、ブライアン・フェリー、トーキング・ヘッズなどのアルバムの大半の解説を担当したぼくにとって、その恩恵は計り知れないものがある。
きちんとサンプル盤が送られてくる有難さは申すに及ばない。それ以上に、3年前の引越しの時、LP盤のすべてをレコード・プレイヤーごと処分してしまった身としては、改めて自分の過去の原稿を再読することが可能となったからである。中には赤面ものの拙い解説も少なくないが・・・。
年明け後ほどなくしてトーキング・ヘッズのデビューから6枚目までの紙ジャケ盤が届いた。そのうちの4枚のアルバムにぼくの解説が収録されているのだが、SHM-CDという高音質が売りものとなっている。
しかし、何よりも驚いたのは6枚目の『スピーキング・イン・タングス』のアート・ワーク! 83年に発表されたこのアルバムの初回限定盤がそっくりそのまま復元されている。現代アメリカのポップ・アートの巨匠ロバート・ラウシェンバーグによるそのジャケットというのは、何と透き通ったクリア・ヴィニールのケース──内部に赤・青・黄の円盤状のフィルムが装着されていて、各々が回転する、という仕掛けになっている。肝心のレコード盤ももちろん透明だ。
さすがに今回はディスクも透明、という訳にはいかなかったが、アルバムそれ自体がラウシェンバーグの手になるアート・オブジェという趣は、至高の喜びをもたらしてくれる点でも、画期的といいたくなる。
また、1月下旬に発売されたアントニー・アンド・ザ・ジョンソンズのアルバム『クライング・ライト』で、実に久しぶりに歌詞の対訳に挑戦──トランスジェンダーのアーティスト、アントニーの歌声に合わせてご一読いただければ幸いである。
舞踏家、大野一雄のモノクロームのポートレイトを表紙にした三つ折りのインナー・スリーヴもアートの味わいあふれるものだ。

