2009.09.28UP
映画史上最高の傑作、と認定されて久しい『市民ケーン』('41)を、まだ26歳になったばかりの若さで発表し、映画監督としてのデビューを飾ったオーソン・ウェルズが、天才的才能の出現と騒がれたことはよく知られている。
その天才ウェルズの晩年が波瀾に富んだものであったことも、ファンにとっては周知の事実、といえるだろう。
それにしても、当時54歳のウェルズがよりによってマカロニ・ウエスタンに出演していたという事実は、ファンの端くれたるぼくにとっても衝撃的であった!
国内初ソフト化となる『復讐無頼~狼たちの荒野』('69)がその問題作だ。ジュリオ・ペトローニ監督の本作の主役テペパを演じるのはマカロニ・ウエスタン・ファンにはおなじみのトーマス・ミリアンである。

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舞台は革命時のメキシコ──辺境の町に降り立ったアメリカ人医師ヘンリー(ジョン・スタイナー)は、処刑寸前の革命軍の捕虜テペパを救出するが、「自分の手でお前を殺したかった」と、復讐の銃を向ける。
肝心のウェルズの役どころはといえば、メキシコ政府軍のカスコロ大佐で、もっぱらテペパを追い回すという脇役に終始・・・。
そのウェルズの大佐が、終盤に至って主人公のミリアンと対決し、テペパに致命傷を負わせるシーンが唯一、最大の見せ場といいたくなるのだが、それにはぼくならではのこだわりが背景となっている。
オーソン・ウェルズのマカロニ・ウエスタンへの出演を衝撃的、と受け止めたことに関しては実はもうひとつの理由があった。この『復讐無頼~狼たちの荒野』に先立つもうひとつのトーマス・ミリアン主演作『情無用のジャンゴ』('67)に於いて、ぼくは早々にウェルズをミリアンと<共演>させてしまっていたからだ!

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ジュリオ・クエスティ監督によるこのマカロニ・ウエスタンは、潜在的ゲイ・テイストを秘めた破天荒の異色作で、かねてぼくの偏愛するカルト映画のトップに位置するものだ。
インディアンの頭の皮をナイフではぎ取るとか、男の腹を切り裂いて黄金の弾丸を取り出すとか、一般的にはマカロニ・ウエスタンならではの残虐描写が話題となったが、全編を包み込むゲイ・エロティシズムが、実はその魅力の秘密の鍵となっている。
ミリアンが演じる主人公(多くのマカロニ・ウエスタンの主人公同様、彼にも名前がない!)はハーフメキシカンで、白人の強盗団の手先として金塊強盗を成功させた直後、裏切られ銃弾を浴びる。死の世界からよみがえった彼は、復讐のため強盗団が投宿中の町へやって来るが、黄金を狙う酒場の主人らの手で、すでに皆殺しにされていた・・・。
そこへ、黄金の噂を聞きつけたギャング団も加わり、金塊をめぐる争奪戦が繰り広げられていく、という趣向だ。
最大の見ものはロベルト・カマルディエルという俳優が演じるギャング団のボス、ソロの存在──筋骨逞しい美丈夫、それも黒ずくめのユニフォームのイケメン集団を率いてご満悦のこの男の風貌が、いかにもウェルズにそっくりなのである。
このギャング団に酒場の主人の息子が強姦された挙句、自殺するエピソードも尋常ではない。因みにこの息子を演じたのは公開当時日本でも人気のあった美少年アイドル・スターのレイモンド・ラヴロックだ。
クエスティ監督の遊び心は、ソロ役にウェルズのイメージを投影しただけでなく、主人公とこのボスの対決シーンでは、ウェルズが監督した『上海から来た女』('48)から有名な鏡の部屋のシーンを引用してみせる、という具合だ。また、ソロが鵡をペットに飼っているという設定も、ウェルズの伝記を読むとその通りで、クエスティ監督のウェルズ・マニアぶりも半端ではない。
また、イギリスの俳優サイモン・カロウのウェルズ伝記では、この天才的映画作家がバイセクシュアルであった事実も披露された。
