
美学の極致まで達した死の儀式を見せる美しい映画
本木雅弘演じる主人公の“納棺師”が死に化粧と納棺の儀式を行う。死に装束の着物の衣ずれの音まで耳に心地良く響く。彼の所作ひとつひとつが指先まで神経が行き届いて、(ポーラ伝統文化振興財団の)記録映画でよく見る“匠の仕事”、美学の極致にまで達している。男の前の職業が、指先が器用なチェロ奏者だという仕掛けが効いている。
滝田洋二郎監督と脚本を手がけた小山薫堂が紡ぎ出す物語は、死の儀式を執り行う主人公の周りからの“穢れの職業”だという意識をむき出しにする。やがてその儀式なしに、故人との別れは成り立たないことを訴える。最初はショックを受ける広末涼子演じる妻さえも、儀式の凄みに刮目せざるをえなくなる。
納棺師の先輩役の山崎努がフグの白子焼きを、伊丹十三映画のように美味そうに食べるシーンがある。食べることも人間の営みのひとつで、生き物の“死”に始末をつける行為であることをグロテスクなまでに見せつけるのが興味深い。人間は生き物の“死”の上にしか “生” を享受できない。なかなか深い。
この納棺師のひたすら美しい死の儀式は、一度でも親しい者を出棺した過去がある御仁なら、涙なくして観られないだろう。藤沢周平文学でおなじみの山形・庄内地方の移り変わる四季の自然が表情豊かで、美しい映画だ。(文:佐藤睦雄)
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遺体を棺に納める“納棺師”という職業を通して、様々な死と向き合い人生を見つめるヒューマンドラマ。監督は「壬生義士伝」「バッテリー」の滝田洋二郎、音楽を久石譲が担当。ひょんなことから納棺師の見習いとなった元チェリストの大悟は、妻の美香には冠婚葬祭の仕事とごまかして働いていた。日々とまどいながらも様々な死と出会い成長していく大悟と、それを見守る美香を本木雅弘と広末涼子が好演。
監督:滝田洋二郎
脚本:小山薫堂
撮影:浜田毅
音楽:久石譲
プロデューサー:中沢敏明、渡井敏久
出演:本木雅弘、広末涼子、山崎努、余貴美子、杉本哲太、峰岸徹、山田辰夫、橘ユキコ、吉行和子、笹野高史
2008年日本映画/2時間10分
配給:松竹
丸の内プラゼールほかにて現在公開中
http://www.okuribito.jp/
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