
“香港ノワール”の金字塔となった「男たちの挽歌」(1986年)で注目され、ハリウッドに進出。「ブロークン・アロー」(96年)、「フェイス/オフ」(97年)、「M:I-2」(2000年)などを大ヒットさせ、ハリウッドを代表する監督となったジョン・ウー。最も成功したアジア人監督となった彼が、10年ぶりに母国に戻り撮った作品が、全2部作として公開される超大作「レッドクリフ」である。中国に伝わる『三国志』のなかの最も有名なエピソードのひとつである“赤壁の戦い”を、100億円の製作費をかけ壮大なスケールで描く、まさに、ジョン・ウー悲願のプロジェクトである。
ジョン・ウー監督インタビュー
私財を投じてでも妥協したくなかった、構想18年の悲願の映画
――18年間温めてきた企画ということですが、なぜ『三国志』、とくに“赤壁の戦い”に惹かれた理由は何ですか?
「子供の頃から、『三国志』のなかでも“赤壁の戦い”は、大好きなエピソードでした。劉備、関羽、張飛、趙雲、孔明、周瑜などの英雄的な人物が素晴らしいのはもちろんですが、とくに、中国的な勇気が描かれている点に惹かれました。弱者が強者に勝った象徴的な戦いです。周瑜を中心に人が団結することで、驚くほどの力を発揮できることを示しているのです。戦略や知恵、対人関係などにおいては、ビジネスにも多いに参考になる。とても現代的な物語でもあるんです。暗いニュースが多いこの時代に、私は、この勇敢な物語で人々を激励したかったのです」
――「パイレーツ・オブ・カリビアン」のスタッフが参加していますが、ハリウッドでの経験がなければこの映画化は実現できなかったと言えるのでしょうか。
「もちろん。“赤壁の戦い”は、人間的なドラマの他に、陣形や軍略、そしてアクションシーンなど映像化するうえでチャレンジになることも私にとって魅力でした。10年以上、仕事をしてきて、スケール感のある大作を作るうえで何が必要かは十分心得ているつもりです。そういったハリウッドでの経験から学んだ手法と中国らしいテーマを融合させたら、これまでとは違ったタイプの映画を作れるのではないか、と思ったのです」
――中国語で撮ることに思い入れはありましたか?
「いい質問ですね。もちろん、ありましたよ。ハリウッドに行って最初に撮った『ハードターゲット』は、実は成功しませんでした。それまでも、米国の生活や文化について十分学んだと思っていたのに、実際、現地に住んでみると何かが違う。そこで、私はこう思ったのです。もし、ハリウッドで映画を撮るのなら、米国的ではない私ならではの要素を盛り込むべきだ、と。私がハリウッドで成功できたのは、他の監督にはない東洋的な要素があったからだと思います。今回、中国に戻ってきて、また自分でも中国人に戻ったと思っています。でも、不思議なことに、中国語で脚本が書けなくなってしまった。香港で撮っているときにはすべて自分で書いていたのにね。“赤壁の戦い”は最も中国的なストーリーなはずなのに、西洋人のようなジョークを書いてしまうんです。だから、脚本家も何人か入れ、私自身も時代劇ならではの表現など、イチから勉強し直しました。とても、興味深い体験でしたよ」

ジョン・ウー監督
――製作費100億円は、ハリウッドでも決して低い金額ではありません。しかも、製作の遅れなどで、あなたも10億円以上の私財を投じているとか。非英語映画では、これはとてもリスキーなことですよね。
「撮っているときは、リスクについては、ほとんど考えていませんでしたね。確かに天候や人為的な問題で、さまざまなトラブルが起きて予算はオーバーしてしまった。ハリウッドのシステムは、10日間撮影が延びたら、別のシーンで10日間削るという方法で調整するのですが、今回はそれをやりたくなかった。スタッフはワンシーン、ワンシーンのために念入りに準備をしているのだから、それを無駄にして彼らをガッカリさせたくなかったのです。だから、私財をつぎ込んで、あまりファイナンシャルなど余計なことは考えず、作品作りに集中できるようにしたんです。作品の出来が良ければ、スタッフの達成感は大きい。若い人にチャンスを与えることも、今回の映画の意味のひとつだったんです」(取材・文:立田敦子)

西暦184年から100年。魏・呉・蜀の3国が鎬を削った三国時代を記した中国の名高い歴史書『三国志』。なかでも、名戦で有名な“赤壁の戦い”を名匠ジョン・ウーが全2部作として映画化。208年、帝国支配に勢いを増す曹操は、80万の大軍を率いて劉備軍に迫る。2万の軍しか持たない劉備軍の軍師・孔明は、孫権軍に同盟を申し入れる。PartⅠは、孫権軍の人望の厚い知将・周瑜と孔明の友情を中心に、劉備軍を決戦の地・赤壁で迎える大激戦までを描く。※PartIIは来年4月公開。
原題:赤壁
監督:ジョン・ウー
脚本:ジョン・ウー、カン・チャン、コー・ジェン、ジン・ハーユ
製作総指揮:ハン・サンピン、松浦勝人、ウー・ケボ、千葉龍平、チン・ウェン・ハン、キム・ウデク、ユ・ジョンフン、ジョン・ウー
製作:テレンス・チャン、ジョン・ウー
撮影:リュイ・ユエ、チェン・リー
音楽:岩代太郎
アクション撮影:コリー・ユン
出演:トニー・レオン、金城武、チャン・フォンイー、チャン・チェン、ビッキー・チャオ、フー・ジュン、中村獅童、リン・チーリン、ユウ・ヨン、ホウ・ヨン、トン・ダーウェイ、ソン・ジア、バーサンジャブ、ザン・ジンシェン、チャン・サン
製作国:2008年アメリカ・中国・日本・台湾・韓国合作映画
上映時間:2時間25分
配給:東宝東和、エイベックス・エンタテインメント
日劇1ほかにて全国公開中
http://redcliff.jp/index.html
(C)2008 Three Kingdoms Ltd. (C)Bai Xiaoyan
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