
1920年代のカリフォルニアを舞台に、石油採掘業者のダニエル・プレインビュー(ダニエル・デイ=ルイス)の壮絶な欲望や裏切り、心の闇を描き出した「ゼア・ウィル・ビー・ブラッド」は、観ている者が押しつぶされそうな空気すら放つ重たい作風ながら、本年度アカデミー賞で作品賞、監督賞はじめ最多8部門にノミネートされた。そんな本作について、この映画を文字通り体現し、その圧倒的な存在感で見事2度目のアカデミー賞主演男優賞を手にしたダニエル・デイ=ルイスに話を聞いた。(取材・文:小西未来)
ダニエル・デイ=ルイス インタビュー
「新しい役柄を演じるときは、いつもゼロからのスタートになる」
――非常に難しそうな役柄でしたが、これまでに演じたキャラクターと比較していかがでしたか?
「うーん。いま思い起こしてみても、それまでに演じた役柄よりも苦労したとか、楽にこなせたとかいう記憶がないんだ。そもそも、役柄同士を比較するのは難しいしね。どんなキャラクターを演じるにせよ、ぼくの役者としての目的は常に同じなんだ。架空のキャラクターのなかに命を見いだし、自分が頭のなかに作り出した幻想を、体外に投影する、という。あとは、周囲の人が、ぼくをそのキャラクターだと信じてくれることを祈るしかない。
ただ、目標はいつも同じだけれど、そこに到達するための過程はキャラクターごとに異なる。だから、新しい役柄を演じるときは、いつもゼロからのスタートになる。赤子同様の状態で、不安でいっぱいになりながら、少しずつキャラクターを積み上げていくんだよ」
――ダニエル・プレインビューとあなたとの間に何か共通点はありますか?
――プレインビューは堕落への道を進むことになりますが、それは金と権力を手にしたからだと思いますか?
「どうだろうね。ただ、金と権力を手にすること自体は、関係ないんじゃないのかな。問題は、手にした力を乱用することであって。プレインビューは権力を得るために、少しずつ犠牲を払っていく。そして、いったん売り払ってしまった魂は、もう取り戻すことができないことに、あとになって気づくんだ。どんどん感覚が鈍くなって、いつしか、他人だけでなく、自分自身をも裏切ることになるんだよ」
――アンダーソン監督は俳優にとても人気がありますが、あなたから見て、最大の魅力はなんですか?
「ポールは、他の優れた映画監督と同様に、役者にとって必要不可欠なものが何であるか理解している。ぼくらが求めているのは、自由に模索できる労働環境なんだ。こう言うとすごく簡単なことのように思えるかもしれないけれど、映画監督のなかに、それを提供できる人は非常に少ない。製作費やスケジュールが決まっている映画製作のなかで、ぼくら役者は混沌のなかをさまよう自由を求めているわけだからね。でも、ポールはぼくらにその機会を提供してくれるんだよ」
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「ブギーナイツ」「マグノリア」の鬼才ポール・トーマス・アンダーソン監督が、20世紀初頭のカリフォルニアの石油産業を背景に、家族、宗教、裏切り、そして欲望について描いた人間ドラマ。原作は社会派作家アプトン・シンクレアによる「Oil(石油)」(1927)。主演は「マイ・レフト・フット」「父の祈りを」「ギャング・オブ・ニューヨーク」のオスカー俳優ダニエル・デイ=ルイス。第80回アカデミー賞では主演男優賞と撮影賞を受賞した。
原題:There Will Be Blood
監督・脚本:ポール・トーマス・アンダーソン
製作総指揮:スコット・ルーディン、エリック・シュローサー、デビッド・ウィリアムズ
製作:ポール・トーマス・アンダーソン、ダニエル・ルピ、ジョアン・セラー
原作:アプトン・シンクレア
撮影:ロバート・エルスウィット
音楽:ジョニー・グリーンウッド
美術:ジャック・フィスク
出演:ダニエル・デイ=ルイス、ポール・ダノ、ケビン・J・オコナー、キアラン・ハインズ、ディロン・フレイジャー、ラッセル・ハーバード、ランダル・カーバー
2007年アメリカ映画/2時間38分
配給:ディズニー
4月26日より、シャンテシネほかにてロードショー
http://www.movies.co.jp/therewillbeblood/
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