
阪本順治監督インタビュー
「子供だけは絶対に大人の暴力から守らないといけない」
闇の核心に迫れば迫るほど苦悶する南部の一方で、息子の命を助けたい一心でタイでの臓器移植手術に臨む日本人夫婦(佐藤浩市、鈴木砂羽)も登場。タイ人の子供の命をとるか、日本人の子供の命をとるか、どちらにも転べない状況が浮かび上がってくる。
「彼ら夫婦が行うことを犯罪として断罪するという方向には、僕自身は持っていけませんでした。それで、彼らの葛藤みたいなものをそのまま表してみたんです。あとは観た人がその葛藤をどう受け取るかっていう判断ですよね。臓器売買に関しては、カンパが集まって、海外で手術をするっていう日本人の子供の美談しか聞かないじゃないですか。それに、『どうして子供は、お金を集めて海外でしか手術しないんだろう』って長い間思っていたんです。映画では極端な描き方でしたが、この問題は皆が何かおかしいということをわかっていながら、陰に追いやってきたわけです」

タイの子役たちに詳しく説明したという
「日本の俳優とはもちろん、タイの人ともかなり突っ込んで話し合いました。当然タイの俳優たちは、この映画で扱うような酷い事実や、何でこの映画が作られなければならないかということを知っていて参加しているわけです。だから、どう表現するかということはよく話し合いましたね。日本の俳優もタイの俳優も納得して『全部わかった』という返答がないと、撮影には入らない現場でした」

「結局、世の中どこで起こっていることも、大人同士が戦って、お互いに血を流して、傷つけ合っているわけだけど、子供だけは絶対に大人の暴力から守らないといけない。それは、子供のときに傷つけられると、もう“普通”がどういう状態かわからなくなるし、自分がどう“普通”と違うかもわからなくなってしまうからなんです。だから、NGOは基本的に子供たちを救うことはできても、全員のケアはしきれないわけです。子供らしさを取り戻してあげようと思っても、ある種受け取る側の自尊心を含めて、子供なりの根っこがないと、いくら話しかけてケアしても、元には戻れないんです。これは大人の女性がレイプされて傷ついてトラウマになるのとはまったく違っていて、子供たちが受けた傷はトラウマにさえならないんですよ」
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「血と骨」「タクシー狂躁曲」などで知られる梁石日の同名長編小説を、「KT」「亡国のイージス」「魂萌え!」の阪本順治監督が映画化。タイの裏社会で行われている幼児売春、人身売買、臓器密売の実態と、その闇に迫る新聞記者(江口洋介)、NGO職員(宮崎あおい)、フリーカメラマン(妻夫木聡)の奮闘がサスペンスフルに描かれる。共演は佐藤浩市、豊原功補、塩見三省、鈴木砂羽ほか。
監督・脚本:阪本順治
製作:気賀純夫、大里洋吉
原作:梁石日
撮影:笠松則通
音楽:岩代太郎
企画:中沢敏明
プロデューサー:椎井友紀子
主題歌:桑田佳祐
出演:江口洋介、宮崎あおい、妻夫木聡、プライマー・ラッチャタ、プラパドン・スワンバン、塩見三省、鈴木砂羽、豊原功補、佐藤浩市
2008年日本映画/2時間18分
配給:ゴー・シネマ
シネマライズほかにて現在公開中
http://www.yami-kodomo.jp/
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