
人間ドラマにこそ比重を置いた、ささやかな良心作
「西遊記」「HERO」に次ぐフジテレビ月9ドラマの映画化と聞けば、映画を愛する者なら嫌悪する。しかし「ガリレオ」劇場版は、意外にも「映画」であることを志向したささやかな良心作である。TVシリーズで確立した戯画的で軽妙なノリを最小限に抑え、番外編的な位置づけにある原作に忠実に、人間ドラマにこそ比重を置いたのだ。
人生に絶望していた高校教師(堤真一)が、殺人を犯してしまった隣人の母(松雪泰子)と子を救うべく、頭脳を生かして完全犯罪を打ち立てる。警察に協力する物理学者(福山雅治)は、旧友である彼との天才対決に挑むのだが、謎解き以上に犯罪をめぐる人間の暗部や業が丹念に描かれていく。ただし、大きな欠陥が最低3つ。冒頭に用意されたファンサービス的大掛かりな場面は作品スタイルを壊し、福山×堤が極限下で対峙する雪山登山ロケは、セット撮影にしか見えずスペクタクル性を欠く。そして、堤×松雪の感情が横溢するクライマックスは、カットを割りすぎてサイズも不適切。俳優の表情をじっくり見せるべき肝心なシーンであったが、TV屋的な馬脚を現してしまった。
とはいえ、もはや死語と化した標語“めざせハリウッド”の下、「映画」を冒涜し続けてきた中枢にあって、アンチな精神を感じさせ、まるでアスファルトに咲いた一輪の花のよう。「実に面白い」本作の出現をきっかけに旧体制をぶっ壊し、“脱・TVドラマに毛の生えた映画のようなもの”へと舵を切ることで、お台場の本丸を海に沈めた「252/生存者あり」への回答にしてほしい。(文:清水節)
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2005年に直木賞を受賞した東野圭吾の人気ミステリー「探偵ガリレオ」シリーズ第3作「容疑者Xの献身」を、TVドラマ「ガリレオ」のスタッフ・キャストで映画化。顔を潰され指を焼かれるという残忍な殺人事件が発生。内海刑事(柴咲)はいつものように天才物理学者で通称“ガリレオ”の湯川(福山)に助けを求めるが、被害者の元妻の隣人として捜査線上に浮かんだのは、湯川の大学時代の友人で天才数学者の石神(堤)だった……。監督は「県庁の星」の西谷弘。
監督:西谷弘
脚本:福田靖
製作:亀山千広
企画:大多亮
原作:東野圭吾
音楽:福山雅治、菅野祐悟
撮影:山本英夫
出演:福山雅治、柴咲コウ、北村一輝、ダンカン、長塚圭史、金澤美穂、益岡徹、林泰文、渡辺いっけい、品川祐、真矢みき、松雪泰子、堤真一
製作国:2008年日本映画
上映時間:2時間8分
配給:東宝
日劇2ほかにて現在公開中
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(C)2008 フジテレビジョン/アミューズ/S・D・P/FNS27社
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