アビイ・ロードの歩き方―私のビートルズとロンドン―THE WAY TO ABBEY ROAD『アビイ・ロード』のカヴァーを見ていちどはここを歩いてみたいと思った人からとくに何も思わなかった人まで、リアル・ピープルにきくそれぞれのビートルズ、そしてそれぞれのロンドン。

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#07 Oh,Boy!! 頭の中で、今日も脳内ビートルズが鳴っている (奥田祐士)

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1. 奥田祐士氏。僕が中学3年当時、ビートルズの訳詞集には岩谷宏さんの自由訳と片岡義夫さんの直訳の2種類があったんです。岩谷さんが訳した「エリーナ・リグビー」は、東京のOLの話になっていたりして、それはそれでおもしろかったんですが、ちょっとやりすぎな感じもした。いっぽう片岡さんのは完全な直訳調。その中間をいけないかと思って、我流で歌詞を訳し始めたのが、今の仕事につながっています。
2.奥田さんが手掛けた本の一部。『ザ・ビートルズ・サウンド 最後の真実』(白夜書房)。EMIアビー・ロード・スタジオのエンジニアだったジェフ・エメリックがビートルズのスタジオワークの一部始終を著した。ビートルズについては、あたかもその場にいたかのようなフィクション本が多い中、この本は実際にその場にいた人が書いたものだけに迫力がある。本そのものも616頁と大迫力。『ザ・ビートルズ・ソングブック』(ソニーマガジンズ)は、ビートルズが発表したすべての楽曲の対訳を収録。英詞はコードネーム付き。

 頭の中にあるビートルズの音楽が、好きな時に好きな所で取り出せる。で、時々CDを聴くと、あれ、こんな音鳴ってたかな、なんて、また新たな発見があるわけです。で、脳内ビートルズを調整する。ですからそんなに四六時中聴いてるわけじゃありません。
 初期に限っていえば、ビートルズの歌詞づくりはあんまり上手くないですね。もともと彼らはプロのソングライターを目指していたんですが、あくまでも曲づくりがメイン。でもポップスには歌詞が必要だというんで、やむを得ず作詞をしていたようなんです。それと彼らの中に、ポップスの歌詞は他愛ないことしか書いちゃいけないという意識があったみたいなんですね。ビリー・ジェイ・クレーマー&ダコタスに提供した楽曲に「I’ll Be ON My Way」というのがあるんですが、その中で“moon—June”という韻を使っている。まぁわざとかもしれませんが、こんな陳腐な韻を平気で使うところに、当時の彼らの歌詞に対する意識が出ていると思います。
 ですが中期から後期に入ると、ポールはすごくよくできた小説っぽい歌詞を書くようになりますし、ジョンの歌詞も、とくにヨーコとの出会い以降、ぐっと説得力や迫力を増しました。具体的に歌いかける対象ができたからでしょう。
 好きな歌詞は、たとえばアルバム『サージェント・ペパーズ・ロンリー・ハーツ・クラブ・バンド』の「A Day In The Life」。とくに冒頭の”I read the news today”のあとに入る“oh boy”がいいですね。「いやはや」とか 「まいったな」といった意味合いの言葉で、べつになくてもいいんですが、これが入ってくることで、歌詞にほどよい遊び心と、無常感がつけくわえられる。こういう、ごく簡単な言葉で広がりを持たせるのが、ビートルズはほんとに上手かったと思います。
 ロンドンにはまだ行ったことがありません。一度は行ってみたいですし、空港がジョン・レノン空港に名称替えしたリバプールにも、当然、飛行機で乗り付けたいんですが…。ニューヨークにはけっこう行っていて、ダコタ・ハウスの前に立ったりもしましたが、ロンドンはなんだかハードルが高くて。『ビートルズ—ロンドン ビートルズの歩き方』(プロデュース・センター刊)なんて本を読むと、おなじみのアビイ・ロード・スタジオ以外にも、行っとかなきゃいけない場所だらけなんですけどね。

取材・文/森澤郁夫

奥田祐士
翻訳家


中学3年生の頃、赤盤・青盤を聴いてビートルズ・ファンに。音楽誌編集者を経て現職。現在、EMIミュージックからリリースされているビートルズ作品の歌詞対訳も手がけている。現在、ビートルズとも縁の深いフィル・スペクターの評伝を訳出中(来春、白夜書房から刊行予定)。


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