アビイ・ロードの歩き方―私のビートルズとロンドン―THE WAY TO ABBEY ROAD『アビイ・ロード』のカヴァーを見ていちどはここを歩いてみたいと思った人からとくに何も思わなかった人まで、リアル・ピープルにきくそれぞれのビートルズ、そしてそれぞれのロンドン。

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#38 ジョン・レノンの声とユーモアと頭の良さが好き (YO-KING)

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1.UKオリジナル盤シングル・コレクションの一部。「アナログを集め始めたのは21世紀に入って、モノラルってものに興味を持ち始めてから。ビートルズのシングルはほとんどモノラルで出てる。当時のラジオはモノラルだからね。シングルの「レイン」を聴いてびっくりして、今まで聴いてた「レイン」はなんだったんだ、と。『ホワイト・アルバム』のモノラルとかすごい面白いよ。ステレオだと最初のSEの飛行機の音が左右にしゅ〜っ、でもモノラルは奥から手前にしゅ〜っ。後期のビートルズはエコーっぽいんだけどモノラルは乾いてる。本人たちのOKミックスはモノラルで、ステレオは後でジョージ・マーティンがやってるからね。「レット・イット・ビー」からはステレオだけになるんだけど、ビートルズはモノラルを聴くべきなの。本当はね」

 ビートルズとの出会いは、『悪霊島』(映画)で使われていた「レット・イット・ビー」。もちろんその前からどこかで耳にしてたんだろうけど、小学校高学年であれを聴いて、“いい曲だなぁ”と思ってアルバムを買った。でも聴いてみたらちょっとガクッとしたかもしれない。なんとなくイメージと違って(笑)。でもすぐに『サージェント・ペパーズ』も買って、「ア・デイ・イン・ザ・ライフ」を好きになった。小学生でもわかったよ。日本人が好きな泣きのメロディじゃない? オタク気質があって解説とかライナーノーツとか読みながら聴くタイプだから、何かで“ロックの名盤中の名盤”っていうのを読んで『サージェント』を買ったんだと思う。でも10代の頃はそんなに聴いてない。高校に入ってナガイくんっていうビートルズ・マニアと出会って、“俺は全部知っている”って言うのを聞いて“すごいなぁ”って思ったのを覚えているから、俺は高校の段階では全部聴いてなかったと思う。
 難しいんだもん、ビートルズは。ストーンズは簡単にコピーできるけど。でもストーンズを好きになればなるほどビートルズのスケールがわかる。やっぱり1曲1曲新しい発明をしているようなもんだから。ストーンズはブルースとかロックンロールをコピーしながら“あ、新しくなっちゃった”みたいな感じだと思うけど、ビートルズはもっと意識的だったと思うんだよ、新しいことに関しては。それが大成功してるのがすごい。よく言われるのは、最初は黒人のカバーから始めたっていうけど、実はドゥワップを4ピースのビート・バンドでやったのはビートルズが初めてだったと。あれは当時の超最先端。音楽的なマナーに反したことをわざとやってる。で、7〜8年で『アビー・ロード』まで行っちゃうってのはすごいですよ。めちゃめちゃ忙しかったと思うけどね。それがちょうど20代に当たってたっていうのも素晴らしい。ジョンとポールがひとつのバンドにいたっていうのもね。ふたりいたから後天的に天才になった部分もあるだろうけど。先天的な天才成分があってこその後天的な天才だから。
 ジョンが死んだのは中1のときだけど、あまり覚えてないんだよね。大学のときはビートルズは聴いてなかった。やっぱ若いからメジャーなものを毛嫌いするじゃない。特にビートルズって下手すると親の世代も大好きなバンドだからさ。そういうのもあって、若気の至りで。再発見のきっかけは何だったんだろう。しばらく聴かなかったことで『キング・オブ・ロック』(95年にリリースされた真心ブラザーズの会心作)ができて、でも街でジョンの声が耳に入ってきたんだと思う。そしたら異常に染みて。本当は好きなのにひねくれて聴かないっていうだけだったから。で、96年に「拝啓、ジョン・レノン」を書いた。そうね、ジョン・レノンはもちろん大好き。ここは俺とは違う、っていうところはあるけど。どこに惹かれるんでしょうね。声とユーモアと頭の良さかな。頭のいい人が好きなのよ、俺。すっごいダメ人間だったんだろうな、とも思うけど(笑)。
 ロンドンには『キング・オブ・ロック』のTDで行った。でもビートルズを聴いてない時期だったから、いわゆる名所は全然行ってない。もったいないなぁ。でもリバプールよりニューヨークのダコタ・ハウスとかに行きたい。
 今は正直言ってビートルズはあんまり聴いてない。でも一生、熱病がときどき来る存在だろうね。今はたまたま来てないだけで。リンゴのフィルが聴きたい、とかね。そんなときがあるんだよね。

取材・文/佐々木美夏  

YO-KING
ミュージシャン


1967年生まれ、東京都出身。早稲田大学在学中に桜井秀俊と真心ブラザーズを結成し、89年デビュー。フォーク・デュオとしてのスタートだったが、その後あらゆるジャンルの音楽を取り込んだサウンドを確立させ、看板ボーカリストとして不動の人気を誇る。並行してソロ・アーティストとしても活動し、“日本一かっこいい40代”を目指す。2008年7月2日には真心ブラザーズのライブ・アルバム『LOVE ME LIVE〜MB’S BEST LIVE 06-07〜』をリリース。初回限定盤は抱腹絶倒のMC集がついた2枚組。2009年は祝・20周年!


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