アビイ・ロードの歩き方―私のビートルズとロンドン―THE WAY TO ABBEY ROAD『アビイ・ロード』のカヴァーを見ていちどはここを歩いてみたいと思った人からとくに何も思わなかった人まで、リアル・ピープルにきくそれぞれのビートルズ、そしてそれぞれのロンドン。

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#55 同じことを繰り返さず、必ずユーモアがあるのがかっこいい (松尾清憲)

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1.来日記念盤として発売された日本編集アルバム『ステレオ! これがビートルズ』のVol.1とVol.2(1966年)。「相当聴きましたから、かなり傷んでますけどね。当時は情報が少なかったから、写真欲しさにシングルやアルバムを買いました。このアルバムにはちょっとした写真集のようなものがついていて、そういうのがうれしかったんです」

 ビートルズを最初に見たのは小学校のとき、テレビのニュースです。1964年頃ですね。それまでのグループとは音が違いました。ベンチャーズが好きだったんですけど、ビートルズは歌があって、しかもシャウトしたり、裏声で歌ったり。ああいう歌唱法はそれまで日本にはなかった。何だかわからないけど、もう初めて見た瞬間に、尋常じゃないエネルギーを感じましたよ。

 僕がちゃんとバンドを始めたのは大学からです。ブルース・バンドっぽいのとか、いろいろ。実はその頃、キンクス、ムーヴ、トラフィックとかは演奏していたのに、ビートルズは演奏してないんです。自分のなかでは触っちゃいけない、何か聖域的なものでしたから。だからシネマ時代も、すごくブリティッシュなのに、ビートルズっぽさが前面に出た曲はほとんどない。でも、シネマにはリズムがシャッフルの曲が多いんです。何でかと思ったら、結局、『サージェント・ペパーズ・ロンリー・ハーツ・クラブ・バンド』あたりの音が自分に染みついてるんですね。

 その後、杉真理くんたちとBOXを結成しました。メンバーが各自でレコードを出してきて、ノウハウも持った上で、ビートルズっぽいサウンド……特に『ラバー・ソウル』『リボルバー』あたりの感じを突き詰めたんです。なりふり構わずね(笑)。録音段階では自分たちだけの密かなる喜びで、レコード化は考えていませんでした。

 レコーディングのときって、まずはとにかく録音しておいて「大丈夫、音質は後からどうとでも加工できるから」みたいなことをよく言うんですけど、BOXでは違いました。ビートルズの曲のフレーズには余計なものはない。どれも最初から、質の高い意味をちゃんと備えています。あの感じを出すには、録った段階ですでに音がかっこよくないとダメなんです。それも一発録りの雰囲気を活かした、あまり音数を重ねない形で。だから僕らは、録音前に何度もフレーズを試行錯誤しました。ビートルズもこんな感じでやってたのかな、なんてときどき思いながらね。

 ビートルズのメロディは、A、Bメロが序曲で、その後にいいメロディのサビがあって……という普通の構成ではなくて、最初から最後まで、どの部分から聴いても名曲。ジョンとポール、同じバンドにあんな天才がふたり、対等の立場でいたというのがすごいですね。コード進行も、従来の音楽にあるハートの部分を学び、踏まえた上で、既成概念から抜け出そう、はみ出してやろうという意識を感じます。それは彼ら自身に対してもね。どのアルバムも、前と同じことを繰り返していない。しかもシリアスにならず、必ずユーモアが感じられる。彼らの自然な思想なんでしょうね。そこがかっこいいなと思います。

 みんなに意外だと驚かれますが、イギリスには行ったことがないんです。レコーディングでアビイ・ロード・スタジオに入ってみたいですけど、ロンドンは街並自体がかっこいいから、行けるならどこでもいいですよ。

取材・文/鳥居一希

松尾清憲
ミュージシャン


1951年福岡県出身。鈴木左衛子らとシネマを結成し、1980年にレコードデビュー。84年からソロ活動を開始、並行して88年にBOX、96年にはピカデリーサーカスも結成する。2007年、アルバム『松尾清憲の肖像―ロマンの三原色』と、26年ぶりとなるシネマのアルバム『CINEMA RETURNS』を発表。2008年現在は、イラストレーターの本秀康氏とのコラボによるソングブックCDを制作進行中。

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