

インタビュー 新宿『DUG』中平穂積
エッセイ3 椎根和
エッセイ2 後藤健夫
エッセイ1 片岡義男
相倉久人×菊地成孔 「植草甚一とマイルス・デイヴィス、そしてジャズ」 後編
相倉久人×菊地成孔 「植草甚一とマイルス・デイヴィス、そしてジャズ」 前編
エッセイ3 椎根和
エッセイ2 後藤健夫
エッセイ1 片岡義男
相倉久人×菊地成孔 「植草甚一とマイルス・デイヴィス、そしてジャズ」 後編
相倉久人×菊地成孔 「植草甚一とマイルス・デイヴィス、そしてジャズ」 前編
今春、マイルス・デイヴィス研究本を発刊される予定の菊地成孔さんと、モダン・ジャズ評論の第一人者である相倉久人さんに、今なお若いリスナーに影響を与え続けるマイルス・デイヴィスと、今年生誕100年を迎える究極の趣味人でもあった文筆家=JJこと植草甚一の意外な共通点をあぶり出しながら、これからのジャズに求められるについて、論を交えていただいた。2時間以上にも及ぶ長時間対談になったので、前編と後編に分けてお届けするが、今回はその前編。まずは日本におけるジャズ評論の原点を探り出す話からスタートした。
取材・文/岡村詩野 写真/サコカメラ
取材・文/岡村詩野 写真/サコカメラ
———菊地さんはまもなくマイルス・デイヴィスに関する、非常に濃密な内容の書籍を発刊されるそうですね。
菊地:そうです。一応、<私の本>ということになってるんですけど、私は企画して半分ほどの原稿を書いた主著者なんです。全員で8人くらいが著者として関わってます。一人は晩年のマイルスのバンド・メンバーでもあったケイ赤城さん。そして、晩年のマイルスの服を作り続け、唯一ビビらずにマイルスと話せたという(笑)アーストン・ボラージュ代表の佐藤孝信さん。佐藤さんは今許可を頂いているところですが、このお二方にお話を伺いました。マイルスって晩年は日本贔屓になって、日本にも「俺がマイルスと一番親しい」とかって言う人がヤマのようにいるんですけど(笑)、銭買い抜きに親しかったお二方に登場していただいたと。
それと、次にマイルスの楽曲分析。これ、一般の方にはほとんどおわかりにならないと思うんですけど(笑)。
それと、次にマイルスの楽曲分析。これ、一般の方にはほとんどおわかりにならないと思うんですけど(笑)。
相倉:僕でもわからないんじゃない?(笑)
菊地:相倉先生だったらおわかりに…いや、たぶんならないんじゃないかな(笑)。というのも、普通の楽曲分析じゃなくて、『リディアン・クロマティック・コンセプト』という、特殊楽理論の金字塔であるジョージ・ラッセルが書いた本があるんですけど、そのジョージ・ラッセルの懐刀である神戸の甲陽音楽学院の布施(明仁)先生と、その『リディアン〜』の発展系である『ラング・メソッド』の提唱者である孤高の研究家の濱瀬(元彦)さんのお二方による分析というか論文が掲載されます。それと、今回のこの本のメイン・テーマが“モード”ということで、マイルスの服ですね。モードってモード・ジャズでもあるけど、服という意味でもある。そこで、高村是州さんという服飾にお詳しい研究者の方に、4歳から亡くなる65歳まで、マイルスの服装を研究していただいたと(笑)。
相倉:マニアックだなあ(笑)。
菊地:こんだけのコンテンツでもうお腹いっぱいですね。まあ、僕が東京大学でやった講義で話した原稿も入ってますけど。
相倉:やればやるほど、これでは語り尽くせないってことになるんだよね。昔、学生が僕のところに来て「先生、マイルス・デイヴィス聴きたいんですけど、何か貸してください」って言ったことがあるんです。で、こっちは意地悪して40年代後期から、せいぜい『ラウンド・アバウト・ミッドナイト』くらいまでのアルバムを貸したの。そしたら翌週その学生がキョトンとした顔でやってきて、「あれがマイルスなんですか?」って言うわけ。学生が持っていたイメージと違うんだよね。どの時点のマイルスをマイルスと捉えるかによって変わってくる。古い言い方をするなら、“群盲象を撫でる”ってヤツ(笑)。それが面白いですよね。ただ、ただ、存在が大きいだけの人かって言うとそうじゃない。
菊地:そうですね。研究者の量が多いという意味ではチャーリー・パーカーを超えてますからね。パーカーは資料も少ないし、まあ、活動期間も少ないですけどね。その割に影響力は大きいんですけど、その点、マイルスはとにかく研究本も多いですからね。僕は日本語で書かれたものはおそらく一冊も残らず読んでますけど、英語で書かれた本の中には変わったものもありますよ。マイルスの80年代だけをとりあげたものとか。今回、僕がこの本を作るにあたって改めて読み直したものはなかったですけどね。
相倉:僕はマイルスに限らずどんなアーティストも“研究”したことないからなあ(笑)。
菊地:相倉先生はどっちかって言うと“煽動家”ですからね。“アジテイター”というか(笑)。
相倉:俳優体質なんですよ。その対象になりきっちゃうの。
菊地:ああ、ああ、ナンシー関が千代の富士になっちゃったような(笑)。「肩が痛い、来場所どうしよう?」みたいな(笑)。要するに、イタコ体質ですね。移入されるわけですね。
相倉:何度も聴いているとステージに立っているその人の心理状態が見えてくるんですよ。でも、そうならないと文章が書けない。

