LIVING LEGEND 伝説人 Vol.1 浜田省吾
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CHAPTER3 第三章「最近、素直に話せたこと」 ?突然ですが、「人生がつまらないけど、どうしたらいいのでしょうか?」と相談されたら、どう答えますか?

SH:オレだって、3日に1度はそんなことを考えますよ(笑)。それが自身の根っこから来ているものなのか、それとも、環境から来ているものなのか、まず、どっちなのかを考えなきゃいけないんだろうと思います。もし、環境なら環境を変える努力をしなきゃいけないだろうし、根っこから来ているものだったら、環境を変えても、どこへ行って同じだろうし。イルカが、例えば、水槽に閉じ込められていて、「これは自分らしくないから、自分を変えて何とかしなきゃ」と言っても、それはやっぱりその水槽を出ない限り、イルカらしく生きるのは無理ですよね。

?そうですね。

SH:よく自分探しっていいますけれども、今、自分はどうなんだろうという状況がわからないと、どこに問題があるのかわからない。それに、もともと人生って苛酷なものなんじゃないか…ということもありますよね。

?多くを望まないことですか。

SH:うーん、そういうことではなくて…そんなに美しいものじゃないぜ、生きるって結構きつい、大変なものと思えば、それは当たり前になるのだろうし、人生って、ものすごく喜びに満ちて、素晴らしいものの中に、傷ついたり、病気になったり、年老いたり、そういう苦しいことが点在していますよね。かと思えば、本来ものすごくつらくて大変なものの中に、出会いがあったり、素晴らしい瞬間があったり、誰かに恋したり、いろんないいものが散らばっている。それは結局同じことなのかもしれないけれど、でも全部含めてわかることは、いいところ取りだけはできないということですよね。

?なるほど。

SH:『多忙は神の贈り物』というじゃないですか。忙しくあることは神からの贈り物なんだ、暗闇をのぞかないで、自分を忙しくして、常に何かをしていなさいというのも一理あるかもしれませんね。本来、もともとつまらないものかもしれないから、と考えると、つまんない穴がいっぱい、その辺に見えてくる。そこに落ちないように、いろんなことを自分にさせる。それは、そんなに難しいことじゃなくて、好きな人に会うとか、友達と会うとか、映画を見に行くとか、仕事を一生懸命やるとか、何かに夢中になるとか、そうやって自分を守るんじゃないかな。

?これもまた唐突ですが、浜田さんは映画『男はつらいよ』を見たことがありますか? 寅さんです。

SH:山田洋次監督は大好きです。『男はつらいよ』は全部をマニアックには見てないですけど、日本人としてあれを見ていない人は、まずいないんじゃないかな。

?たまたま先日、秋吉久美子さんがマドンナだった(『男はつらいよ 寅次郎物語』昭和62年封切り)のを見ました。吉岡秀隆さんの満男青年が高校3年生で将来に不安を抱き、「寅さん、人間は、何のために生きてんのかな?」という質問をします。そのとき、寅さんは「生まれて来てよかったなぁって思うことが、何べんかあるじゃねぇか。そのために人間生きてんじゃねぇのか。そのうち、お前にもそういうときが来るよ」って答えます。

浜田省吾

SH:素晴らしいセリフですね。偶然だけど、オレもつい最近同じようなことをスタジオで話しました。スタジオのアシスタントの女のコが、オレがデビューした歳と同じ23歳で「同い年なんだね。オレのデビューしたときと。今、自分が55歳になったことを想像できないでしょう?」と話しかけたら「全然できませーん!」とか言うんだよね。そのとき「これからいっぱいいいことあるよ」って、その女のコにすごく素直に言えた。「これからいっぱいいいことあるからね。おもしろいこと、楽しいことが。もちろん、泣くこともあるけど、いっぱい楽しいことが待ってるよ」とかって言ったのが、今聞いた話と重なりますね。

?ところで、何歳までロックンロールしているんでしょうか?

SH:そうですね、決めないほうがいいと思っているんですね。ここまでやろうとか、やりたいとか、そういうふうに決めないほうがいいと思うんです。多分、自然にわかると思うし、自分で。もうそろそろ潮どきだなって。それは、どういうことが状況の中で起きてそうなるのかわからないですけれども、多分、自分で自然に、「あ、そろそろやめようかな」という時期が来るまでは、あんまり考えずにやっていけばいいと思っていますけど。

?日本でもこれから60歳を迎えるミュージシャンの人たちが、ますます元気に活躍という現状がありますよね。

SH:はい。

?やっぱり皆さん20代でデビューして、いろいろ経験していくうちに、50歳とか60歳の区切りというのは、もっともっと自分の好きなことができるということを見つけるんでしょうか?

SH:よく若いときは純粋だと言うじゃないですか。でも、若いときのほうが、欲とか、いろんな選択肢もいっぱいあって、邪念もいっぱいある。オレのまわりの同世代のミュージシャンをみてもそうですが、歳をとるほうが音楽に対して純粋になりますね。 オレたちのような音楽の世界って、ちょっと年上の人はいるけれども、基本的にオレの年代がいちばん上ぐらいじゃないですか。でも、他の分野の人たちを見渡すと、例えば山田洋次監督なんてもう70歳以上でしょう。『たそがれ清兵衛』、『鬼の爪』、『武士の一分』、あんな素晴らしい作品を今でもつくられているんですよね。年を重ねるごとに作品の味わいが深まっていく。

?吉永小百合さんだってね。

SH:彼女が『赤胴鈴之助』のラジオドラマの子役として…その頃から見聞きしてますからね。そして、今でも素晴らしい演技をなさっている、それを考えると、励まされますよね。

?すごいことですよね。

SH:楽しんでくれるオーディエンスがいるから、できるんですよ。作品が深くなっていくと、その深さをちゃんと理解して楽しんでくれるオーディエンスがいるから、監督の情熱も、もっといいものをつくろうと、冷めることがないんだと思うんです。だから、オレたちミュージシャンやシンガーもリスナーと一緒に成長すると思うんです。自分だけ生きていくわけではないので。それだったら、自分の部屋やスタジオでひとりで演奏していればいいだけですから。リスナーと一緒に成長していく。そういう意味では、自分は素晴らしいリスナーやオーディエンスに支えられていて恵まれているなあと、感謝しています。

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