Muse-女性シンガーの現在地 坂本美雨
Profile
80年生まれ。97年1月、Ryuichi Sakamoto featuring Sister M名義でデビュー。99年、本名で本格的に音楽活動を開始。これまでに4枚のフルアルバムを発表している。現在は音楽活動に加え、連載や翻訳などの執筆活動、ジュエリー・ブランド〈aquadrops〉をプロデュースするなど創作の幅を拡げている。
Album
Official Site
坂本美雨オフィシャルサイト:stellarscape http://www.miuskmt.com/

坂本美雨オフィシャルブログ:ニクキュウ ブロローグ
http://blog.excite.co.jp/miuskmt/

Muse-女性シンガーの現在地


〈muse - 女性シンガーの現在地〉では、個性豊かな女性シンガーをご紹介しています。今回は、前作からわずか1年足らずで早くもニューアルバム『Zoy』を発表した坂本美雨さんです。
インタビュー・テキスト=青木優 写真=鈴木啓太(PLOT. lv04)

ここ数年の坂本美雨は、作品を追うごとに自身のアーティスト性を深めているように思う。最新アルバム『Zoy』は、前作『朧の彼方、灯りの気配』に続いて益子樹(ROVO、ASLN)を共同プロデューサーに迎えた意欲作。おおはた雄一、高木正勝、岡田徹(ムーンライダーズ)、勝井祐二(ROVO)といった多彩な才能とのコラボレートは、透明で、しかもあたたかみを持つ彼女の世界を広げることに成功している。今回はこのアルバムを軸にしながら、さまざまな角度から話を聞いた。自身の内面、音楽観、母性、そして両親——坂本龍一と矢野顕子という、日本のポップ・ミュージック史上に残る偉大な才能を親に持ち、その上で音楽に向かうことについて⋯⋯。飾ることなく、フラットに語る。とても爽やかな人だった。
消えちゃうようなものの中に本当の居場所を感じる
―― このアルバムを聴いて思ったんですけど、坂本さんの歌って、なんだか旅をしているような感覚がありますよね。
「あぁー⋯⋯はい、はい」
―― それは何かを求める心だったり、居場所を探す思いだったり、大切な人を思う気持ちだったり、いろいろですけど。「あそこに行こう」というのもあれば、行き先がわからなくてさまよってる感じもあったりで⋯⋯という意見は、ご自身ではどう思われます?
「ああ、それは正しいです(笑)。私自身が⋯⋯ひとつの場所にとどまって満たされてる状態になったことがないからでしょうね。物理的にも⋯⋯たとえば実家っていうものも、あってないようなものだし。ニューヨークに母がいて、また別の場所に父がいたりして、戻る場所っていうのが、あるわけでもない。物理的に、飛行機で移動してる、その不安な時に歌詞が生まれる時も多いし。つ ねに地に足が着いてないというか、<どこにも属してない>っていうのは、私がものを作る上ですごく大事な感覚ですね」
―― <ここが自分の居場所だな>みたいな感覚がないんですか。
「うん。<ここが居場所だ>って思えるとしたら、その要因は目に見えないものなんです。たとえば光の感じだったり、自分の心の状態だったり⋯⋯。それが明確な、<この人と結ばれたから、ここが居場所だ>とか、家だとか、そういう確固としたものではないんですよ。すぐ消えちゃうようなものの中に本当の居場所を感じる瞬間を大事にしてるというか」
―― へえー。それって昔からあなたの中に宿ってるものなんですか。
「そうですね。人間は⋯⋯簡単に消えちゃえることとか⋯⋯ほんと些細なことで人間は死ぬから、とか。地球なんて、23.5度傾いてるのが、ほんのちょっと違うだけで、もう存続できないわけだし。そういう絶妙なバランスで宇宙も地球も、身体も、成り立ってて。それはすごく奇跡的なことだなぁと思うんですよ。なんか⋯⋯自分の手に負えないもの、人間が関与できないものの存在に対する感謝っていうのも、すごく大きかったし、と同時に、すごく虚しい気持ちもあるというか。こうやって生きてるのは虚しいという気持ちにもなる⋯⋯そこはすごく紙一重だけど」
―― <人間の力なんて及ばないんじゃないか>ってことがあるから?
「うん、という時もあるし。だから⋯⋯確固としたものだと思ってるものは、勘違いというか(笑)、すぐ消えちゃうもの?本来。だから信じられない、だったら地球のほうが、よっぽど信じられるというか(笑)。人を信じてないわけじゃないんですけど⋯⋯見えない、つかめない、実体のないもののほうが、ほんとはリアルで、信じられるものじゃないかっていうことなんです。たぶん昔の人って、そうだったと思うんですよね」
―― 古代の人とかインディアンって、そういう考え方かもしれないですね。そういう発想が身についたのは何でなんですか。
「物心ついたら、こうでしたね(笑)。たとえばニューヨークに、すごく星が見えるところがあって。上向いたら、目が慣れていくうちに、どんどん、宇宙の奥のほうまで星が見えてきて⋯⋯<恐ろしい!>と思ったりとか。それはもう明らかに人間の力が及ばないところで。その<自分はちっぽけだ>っていうところから、いろんな気持ちが生まれてるんですよ。<自分はちっぽけだけど、こんなに素晴らしい世界にいる>とか、<ちっぽけだけど、こんなものを与えられてる>とか。そういう喜びがあるんですよね」
―― そうですか。子供なら「あれが欲しい」とか「あの子とケンカした」とか、普通にある気がしますけど。それと違うところで感応してたんですね。
「うーん、そういうのも、もちろんありますけどね。でもやっぱり、見えないもの——音を聴いて、とか。音で感応する何か⋯⋯。音は見えないものだけど、そこにある願いとか魂とかあたたかさ⋯⋯っていうものを、すごく信じられる環境だったし」
―― つまり即物的ではない、目に見えない、つかめないけど、確かな何かを感じたんですね。音だったり、光だったり。
「うん。<ここが居場所だ>って思えるとしたら、その要因は目に見えないものなんです」
―― <ここが自分の居場所だな>みたいな感覚がないんですか。
「そうですね。ダンスとかね」
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