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昨年9月、地元・京都で開催したくるり主催の野外フェス〈京都音楽博覧会〉。手作りながらも、他にはないこだわりのラインアップが好評を集めた〈音博〉が、さらに充実のアーティスト勢を加えて、今年も開催される。くるりが〈音博〉を通じて伝えたいものとは? 岸田 繁と佐藤征史に話を訊いた。
構成:宮内 健(ramblin')
昨年9月、くるりのオーガナイズにより初めて開催された「京都音楽博覧会」(以下、音博)。京都駅のほど近くにある梅小路公園内の芝生広場にて行なわれたこの“地元密着型フェス”は、派手な仕掛けがあるわけでもなく、また市街地のど真ん中で開催されることもあって、大型フェスのように爆音でロックを堪能するというタイプのイヴェントでもない。しかし、すべてが手作りですすめられていったこの音博は、既存のどの野外フェスよりも異色といえるこだわりのラインアップで、オーガナイザーである(キュレーターと呼んでもいいかもしれない)、くるりの二人が今の音楽シーンに投げかけるメッセージや、彼らのアティテュードを存分に反映した、もっとも冒険心に満ちた野外フェスであるともいえるだろう。
「初めて音博を開催するのが決まったとき、僕らはちょうどレコーディングでヨーロッパに行ってて、すごく間に内容を固めたり、出演アーティストを決め込んでいったりと、結構キツキツだったんです。で、一番最初に〈京都音楽博覧会〉っていう名前が決まったんですけど、そこからいろいろとアイディアを膨らませていくときに、〈京都〉という部分にフォーカスを当ててメニューを考えたりしてたんですけど、どうもしっくりこなくて。だけど、〈博覧会〉という部分にフォーカスを当てると、国内のどんなフェスでもやってないような感覚で、アイディアを膨らませていくことが出来たんです」(佐藤征史)
「やっぱり街中やから大きな音は出せへんし、縛りも多いし、大きなイヴェンターさんがやるようなフェスとちゃうから、出来ることと出来へんことがあるけど、出来ることの中で一番面白いことをやろうっていう感じで。なんていうか、〈フェス=ロック〉みたいなのは、他でもたくさんやってるし、自分らがそういうのをやってもしゃあないですからね」(岸田 繁)
そうして開催された第1回目の音博は、くるり、小田和正、Coccoといった日本のロック/ポップ・ミュージックのメインストリームで活躍する面々から、京都のふちがみとふなとに、八重山民謡の大工哲弘&カーペンターズと、国内勢だけをとってもバラエティ豊か。そこにアメリカのジェイソン・フォークナー、アイルランドの女性バンド=リアダン、そして世界を股にかけて活躍するルーマニアのジプシー音楽集団、タラフ・ドゥ・ハイドゥークスと、まさに万博さながらの国際色豊かなアーティストたちが揃った。
「日本には、欧米の音楽のことを指して〈洋楽〉ってジャンル分けする、よくわからない概念があるじゃないですか? そういうのも、もうやめようっていう。もちろんアメリカやイギリスのアーティストも楽しい人いっぱいいるんですけど、ちょっとデフレ気味というか、無理矢理ブームを作ろうとしている感じもあるし」(岸田)
第2回目の開催となる今年の出演アーティスト陣もまた、くるりにしか並べられない面々である。日本勢には昨年に引き続いての登場となる小田和正、大工哲弘&カーペンターズに加え、細野晴臣はライフワークとしてきたといえよう、アメリカン・ルーツ・ミュージック探究の旅を最高のカタチで結実させた自身のバンド=ワールドシャイネスを率いて登場。さらに、くるりのリミックスも手がけ、矢野顕子とのユニット=yanokamiでも高い評価を集める電子音楽家レイ・ハラカミに、くるり岸田も絶賛するアコースティック・デュオ=ハンバート ハンバートが参加。海外からは、昨年リリースされたくるりの最新オリジナル・アルバム『ワルツを踊れ』の制作がきっかけで知り合った、ジャズとクラシックをベースにしたエクスペリメンタルな音楽を聴かせる奇才デュオ=ラナ&フリップ。スウェーデンのトラッドからポップスまでを流麗なコーラスで聴かせていくザ・リアル・グループ、そしてナイジェリア出身でパリの街角のバスキングで鍛え上げたギターと歌声で、しなやかな強さを持ったレベル・ミュージックを響かせるシンガー・ソングライター=アシャと、これまた前回以上にワールドワイドに音楽性の幅を広げている。
しかし、かなりの音楽好きでも、このラインアップを全部すでに聴いたことがあるという人は少ないだろうし、そうでなくともJ-Popを中心に聴いているリスナーにとっては、ウィーンやナイジェリアのポップ・ミュージックと出会うことも、下手をすれば一生無いまま過ごしているのかもしれない。ある意味ではかなりハードルの高い組み合わせともいえるば、その幅広いスタイルやジャンルを自然とつないでいく、いわば触媒として存在しているのは、やはり、くるりというバンドなのだ。彼らは、独自のロック観をしっかりと核に持ちながらも、紋切り型のバンド・サウンドから離れて打ち込みにトライしたり、ウィーンに渡ってオーケストラを導入した作品を完成させたりと、作品を重ねるごとに大胆かつ柔軟にその音楽性を変貌させてきた。
「そうやって変化していく僕らについてきてくれる、うちのお客さんがそうなのかもしれないですけど、しっかりと芯は持ってるけど、一方で新しい価値観を吸収するスポンジはすごいですからね。僕ら自身も、こういう音博みたいなことをやる時はもちろん、自分らが音楽やる時にも開かれた感じでやりたいってつねに思ってますから。自分らが企画したイヴェントに出てもらうにしても、同じように、出来るだけ開かれた人を呼んでるつもりです」(岸田)
90年代以降、細分化していった音楽のカテゴライズ。その一方でメディアから喧伝されるのは、ヒットチャート主体の偏った情報ばかり。そのどちらも鵜呑みにしていては、音楽的な視野はどんどんと狭まるばかりだ。ちょっと目線を変えれば、世界にはこんなにも楽しい音楽がたくさんあるんだ──京都のど真ん中で開催される〈音博〉は、まるで町の夏祭りだか盆踊りだかにふらっと足を運ぶような感覚で遊びにきたら、なんやらものすごい衝撃が走った……ってぐらいのカジュアルさと、世代を超える親しみやすいアプローチ、そして抜群のアクセスの良さで、新たな音楽との出会いの場を提供している。
「言うても音博が開催されるのは1日だけですからね。そういう意味では、1日でどれだけさまざまな音楽を楽しめるかっていう……そういうとこでも、お得なフェスやと思うんですよ(笑)」(佐藤)
1996年結成。1998年シングル「東京」でメジャーデビュー。現在のメンバーは岸田繁(vo & g)、佐藤征史(b)。日本のロックシーンにおける唯一無二の存在であり、その音楽性はリリースするアルバム毎に多様な色彩を帯び、常に革新的である。また、2008年2月にリリースした2枚組ライヴ・ベスト・アルバム『Philharmonic or die』では、彼らのライヴのクオリティの高さを証明することになった。5月には、ウィーン・アンバサーデ・オーケストラと競演したパシフィコ横浜でのライヴ映像を収録したDVD『横濱ウィンナー』も発売。9月3日には、ニュー・シングル『さよならリグレット』(写真)がリリースされる。京都出身の彼らは京都の学生による自主イベント「みやこ音楽祭」にも積極的に携わり、常に京都と日本の音楽シーンを活性化させ続けている。「京都音楽博覧会2008 IN 梅小路公園」の主催者。
More info→http://www.kyotoonpaku.net
出演アーティスト
くるり/The Real Group/小田和正/細野晴臣&ワールドシャイネス/rei harakami/大工哲弘&カーペンターズ/アシャ/Lana & Flip/ハンバート ハンバート 他
くるりが出演する、その他の夏フェス
7.25 新潟 FUJI ROCK FESTIVAL '08(終了)
7.27 広島 SETSTOCK'08(終了)
8.16 北海道 RISING SUN ROCK FESTIVAL 2008 in EZO
8.17 東京 20th J-WAVE LIVE 2000+8
8.31 山梨 SWEET LOVE SHOWER 2008
9.21 AOMORI ROCK FESTIVAL '08 〜夏の魔物〜

