吉祥寺の小さな路地にある、蔦の絡まった古い建物。急な階段を上るにつれて、モダンジャズが聞こえてくる。その音色に誘われて扉を開くと、薄暗いランタンの明かりに照らされた一室が出現。アンティークの本棚には、年季の入った洋書や古びた時計、錆びついたキャンディー缶などが無造作に置かれている。まるで、遠き時代の書斎に迷い込んだような気分だ。
「JOHN HENRY’S STUDY」は、1980年に開店した老舗のジャズバーだ。オーナーは、ジャズ評論家として知られ、数々のジャズCDをプロデュースしている寺島靖国氏。熱心なファンが多いジャズ喫茶「Meg」をはじめ、吉祥寺界隈で5店の店を経営している。最高級のスピーカーから大音量でジャズを流す「Meg」に対して、こちらはよりカジュアルな雰囲気。1940~50年代のモダンジャズが、あくまでBGMとして心地よく耳を潤してくれる。
店に入ってしばらくすると、意外なことに気づくだろう。バーなのに、カウンター席がないのだ。マスターと向かい合ってお酒を飲むのは苦手、という人は案外多いもの。ここならマスターとの距離感がちょうどよく、気後れすることもない。隣の話し声もほとんど気にならないので、読書をしたり会話を楽しんだり、と思い思いの過ごし方ができるはずだ。
ジャズに欠かせないアイテムといえば、やはりお酒。ここでは、ビールやワイン、ウイスキーに加え、カクテルも250種類以上と充実している。なかでもジャズファンにとって魅力的なのが、スタンダードジャズから名づけた12種類のオリジナルカクテルだ。自分の好きな曲のカクテルを探してみるのも楽しいだろう。
大人の隠れ家のようなバーだが、昼時には違った顔を見せる。スパゲッティや三色そぼろご飯、カレーなどのランチセットを、1000円前後で提供。近くで働く人々が、昼食を取りながら肩の力を抜く、息抜きの場となっているのだ。
昼も夜も、落ち着いた雰囲気と良心的な価格で大人たちを解放してくれる。こんな店があるから、吉祥寺の街歩きはやめられない。
取材・文/渡辺裕希子 写真/関根則夫
1.使い込まれたベンチシートに腰掛けるか、それとも窓際の席から蔦を眺めるか。どちらにしても、ゆったりとした時間が約束されている。
2.古きよき時代の英国を思わせるインテリア。開店以来、雰囲気はほとんど変わっていないという。
3.店名は「ジョン・ヘンリーの書斎」という意味。周囲には、味のあるバーやカフェが並んでいる。
4.ジャズの名曲をモチーフにしたカクテル「ANGEL EYES」900円。浮かんだミントの葉が、エンジェルの羽をイメージ。
5.「ハイネケン」750円と「ポテトのたらこ和え」680円。夜のフードメニューも充実しているので、1軒の店としても利用価値が高い。
JOHN HENRY’S STUDY
東京都武蔵野市吉祥寺本町1-8-14 山水ビル3F
0422-21-3854
11:30~翌0 :30、金・土・祝前~翌1:30
無休
17:30~のバータイムのみチャージ550円


