大正13年に建てられた米蔵を増改築した「でんえん」は、昭和32年の創業。今年の4月に50周年を迎えた名曲喫茶の老舗だ。
「何だか変わったお店でしょう? 店の前を通っても5人中4人は入って来ないわよ」
一人で切り盛りする新井冨美子さんが笑いながら話すものだから、こちらもつられて笑ってしまった。
30席ほどの広さの店内は、一時、漫画家の溜り場になっていたこともあったようで、『ゴルゴ13』の作者、さいとう・たかをや、『漫画家残酷物語』の永島慎二らが顔を出していたという。取材中も近所の常連さんとおぼしき人が、次から次へと入って来て、その一人一人に新井さんが丁寧に話かける。人が集まるわけだ。
それにしても中央線沿線には、なぜ独特の雰囲気が漂う喫茶店が多いのだろうか。
「現在のことは知りませんよ。だけど昔は、下町は商売の街、山手は高級住宅地でした。そして中央線沿線は生活の街だったんですよね。普通の生活をしている人が、暮らしの中でゆとりをもって音楽を聴いていた。そんなスペースが日常にあったということでしょうね」
その店に行けば必ず出迎えてくれるマダムと、店に集う街の人々とが、どこか懐かしい店の雰囲気を創りだしているのだろう。
取材・文/森澤郁夫 写真/岡村智明
1.さまざまなオーナメントや絵画が飾られ、独特の雰囲気を醸し出している店内。
2.手づくりのスピーカー。店内にはカウンターの上にも劇場用の大型スピーカーが備えられている。ジャズやヒーリング音楽が流れることも。
3.CDのほかレコードは約1000枚収蔵。手書きのリストを見ながらリクエストも可。音源の持ち込みも可能で、レコードプレーヤーのカートリッジはオルトフォンSPUクラシックG。
4.お店の名物、コーヒーと自家製レアチーズケーキのセット800円。
でんえん
東京都国分寺市本町2—8—7
042—321—2431
12:00~20:00
木曜
コーヒー450円、紅茶450円、ココア500円、自家製レアチーズケーキ450円、ワイン(ボトル187ml)800円、ウイスキー(シングル)500円
なし


