一見した印象は、オフィス街にあるごく普通の喫茶店。通りすがりの人々は、ここが歴史ある名曲喫茶だとは気づかないだろう。
だが、そこに鎮座する名器を目にしたとき、音楽ファンなら誰しも感嘆の声をあげるに違いない。マッキントッシュの“XRT-22”と“MC2600”という、至高の組み合わせ。店内には1000枚前後のCDやDVDが並び、かぶりつきで楽しむことができる
「音質はクリアで、とにかくスケールが大きい。とくに室内オーケストラのCDを聴くと、演奏が目の前で再現されているような感覚が味わえます。ビバルディの『四季』などは、楽器の位置まで分かるくらいなんですよ」と教えてくれたのは、マスターの中村哲也さん。なるほど、目を閉じると、オーケストラが自分のためだけに演奏してくれているような錯覚に陥る。スピーカーに対峙して座り、集中して聴いている客が多い、というのも納得だ。
店名に“炭火焙煎珈琲”と銘打っていることからも分かるように、コーヒーのクオリティも相当なものだ。「昔からコーヒーが好きだったから、店ではおいしいものを出そうと決めていました。大切なのは豆の品質と鮮度です」と中村さん。神戸の老舗・萩原珈琲から取り寄せた新鮮な豆を、淹れる直前に挽く。決して手を抜くことなく、慈しむように淹れる手つきからは、コーヒーに対する愛情と熱意が見てとれるだろう。苦味と甘味のバランスが絶妙な「アイリッシュ・コーヒー」や、フワフワに泡立てた生クリームがたっぷりとのった「コーヒーゼリー」も、隠れた人気メニューだ。
『ピアノフォルテ』の歴史は1979年、杉並・西永福から始まった。その後赤坂、奥沢、新宿6丁目と移転を重ね、現在の場所に腰を下ろしたのは2007年3月のこと。靖国通り沿いにあり、堅苦しさとは無縁のゆるりとした空間だ。仕事帰りに、あるいは休日の午後に、ふらりと訪れてみてはいかがだろうか。
取材・文/渡辺裕希子 写真/関根則夫
1-2.マッキントッシュの名器が置かれているのは、入口を入って右側の席。左側の席は一般の喫茶店と変わらない雰囲気で、打ち合わせをするサラリーマンなどで賑わっている。音楽ファンなら迷わず、入口を入って右側の席を確保したい。
3.32インチも大型モニターも設置。コンサート映像などをDVDで楽しめる。
4.店の中央にあるのは、ダイヤトーンとNHKが共同開発した “2S‐305”。日本製スピーカーの傑作と呼ばれており、専門家からの評価も高い。
5.「炭火焙煎珈琲」500円と「アイリッシュ・コーヒー」600円。「自家製マドレーヌ」1皿(2つ)200円は、創業当時から変わらない優しい味わいだ。
炭火焙煎珈琲 ピアノフォルテ
東京都新宿区新宿1-34-10 合川ビル2F
03-6303-7937
9:30~20:00、土・祝11:00~19:00
日
珈琲・紅茶500円、カフェ・オ・レ600円


