住宅街に突如現れる、摩訶不思議な建物。切り株のようなフォルム、土づくりの外壁、生い茂る木々に小さな池…。映画の中から飛び出てきたような世界に、ワクワクが高まる。1階でチケットを買った後、線路の枕木で出来た階段を上ると、そこにはスクリーンと映写機、そして座り心地のよい椅子。そう、ここは、館主・才谷遼さんのこだわりが詰まった映画館なのだ。
上映される作品は、日本映画の黄金期を彩った名作ぞろい。それもメジャーな作品に限らず、隠れた名作にも光を当てている点が興味深い。「昔の日本映画は面白くない、と思われがちですよね。でも、実際に見始めると、奥の深さに驚かされます」と話してくれたのは、支配人の石井紫さん。才谷さんのこだわりを受け継ぎ、レンタルビデオ店や他の映画館では出会えないレアな作品を日々発掘している。「映画を通して、その時代の風俗が見えてくるのも面白いと思います。映画会社によってもカラーが違うし、いろいろ見比べてみるのも楽しいですよ」。
「ラピュタ阿佐ヶ谷」の1日は、毎朝10時30分からのモーニングショー「昭和の銀幕に輝くヒロイン」で始まる。原節子や京マチ子、野川由美子など、時代を代表する女優を毎回1人ずつ紹介する。今年の冬で38回目を数える、人気の企画だ。
午後には、 1日3~4作品の“特集”を上映。例えば、温泉を舞台にした映画を集めた「映画×温泉」、松本清張など昭和30~40年代の作品を中心にした「ミステリ映画」など、独特の切り口が面白い。
日によっては、夜9時からレイトショーも実施。1日に5~6作品もの日本映画が楽しめる。また、アニメーションにもこだわりがあり、年に1回「アニメーション・フェスティバル」を開催。国内外の作品が上映されるほか、ワークショップやコンペティションも行われる、本格的な映画祭だ。
映画の合間には、1階受付の奥にあるロビーでひと休みするのもいい。暖かな陽光を浴びながら、映画のチラシを眺めてのんびりゆったり。昔を懐かしむ中高年の人にとっても、当時を知らない若い人にとっても、居心地のよい場所。きっとここは、映画ファンの「パラダイス」に違いない。
取材・文/渡辺裕希子 写真/須藤夕子
1.座席数は48席。通常の映画館よりも背もたれが高く、シートも柔らかいのでゆったりと過ごせる。
2.1階のロビーは、喫茶店としても利用OK。セルフサービスのコーヒーや紅茶(各200円)を飲みながらくつろぎたい。映画館の模型やオブジェなどが展示されているスペースもある。
3.チケットやチラシは、1枚1枚がアート作品のように凝ったつくり。楽しみに集めているお客さんが多い、というのも納得だ。
4.ガリバー旅行記の「ラピュータ島」から名づけられた。3階はフレンチレストラン「山猫軒」、地下1階は劇場「ザムザ」が併設。
ラピュタ阿佐ヶ谷
東京都杉並区阿佐谷北2-11-21
03-3336-5440
上映作品により異なる
年末年始
一般1200円/シニア・学生1000円/会員800円/水曜日サービスデー1000円



