オーナーの杉本真人さんはラーメン店や和食店で腕をふるっていた経歴を持つ。そんな杉本さんがジャズバーを開く契機となったのは、ALTECのスピーカーとの出会いだという。
「ALTECは劇場や映画館で使用される劇場用のスピーカー。ボーカルの奥深さや本来楽器が持つ音の良さが際立ち、まさに音に酔える名機なんです。もともとジャズが好きだったので、このスピーカーを使って音楽を聴かせるバーが作りたいと思いました」
かくして2003年、「Matt」がオープンした。コンセプトは、恵比寿の極日常的社交場。居心地のよい気楽なスペースに、いい音楽と、うまい酒、肴がある。そしていつでも気兼ねなくふらりと訪れ、楽しめるというような意味だ。天井には木の蔦が絡まり、壁には障子を思わせるオブジェと、詩人、坂村真民氏による掛軸がかかっている。和風の温かみのある雰囲気に心がゆるりと時ほぐれていく。
店内の一角に鎮座しているのがALTECのスピーカー。ここから2万曲のストックがあるというジャズが奏でられる。かけるのは杉本さんが好きなピアノトリオを中心に、ボーカルものや80年代のAORなど。リクエストもCDの持ち込みもOKだ。月1ペースで、この極上のスピーカーを使ったジャズやブルースの生演奏も行われるという。音響は抜群だが音楽はあくまでも脇役、というのも「Matt」のこだわり。
「人がいて、日常があって、傍らに音楽がある、というのが店のポリシー。当店に来ると素の自分になれるというお客様が多いんでよ。お客様同士が親しくなることも多く、オープン以来、うちで出会って結婚したカップルは5組もいるんですよ」
元料理人だけあって、自身の出身地である石川の魚を使った一夜干しなど、ショットバーとは一線を画したフードも充実。石川の「天狗舞」などの銘酒をはじめ、日本酒、焼酎は100種、ワインやシャンパーニュも豊富に揃う。この春から和食に合うシャンパーニュ飲み放題と金沢の食材を使ったイベント「金沢ナイト」も開催予定だという。
うまい酒と肴と音に酔いに、大切な仲間と出会いに、足を運びたい恵比寿の隠れ家。
取材・文/高橋かおり 写真/関根則夫
1. 恵比寿駅から徒歩3分ながら静かな隠れ家のような雰囲気。自宅にいるかのような居心地のよさ。
2. 特製の「手ごね金沢バーグ」1200円。肉汁たっぷりで250gとボリュームも大。ふたりでシェアしたい。「天狗舞」1400円、「加賀鳶」900円、グラスワイン900円~、「Matt自家製サングリア」900円など、酒類は充実している。
3. こだわりのスピーカーALTEC。
4. CDを中心にジャズ、ソウル、ブルースをかける。
5. 木と紙を多用した和風の雰囲気が漂う。
Matt
東京都渋谷区恵比寿西1-3-2 東栄ビル6階
03-3770-3556
19:30~3:00(LO)
日曜
チャージ800円、ビール800円、切りたてハモンセラーノの生ハム1000円、のどぐろの一夜干し1500円~


