“カクテルの王様”と呼ばれるマティーニ。人によって作り方や飲み方が大きく異なることから、しばしば議論のタネとなるカクテルだ。250種類を超えるレシピがあり、「マティーニを飲めば、その店の実力が分かる」とも言われている。
西麻布にある『Bar Martini』はかつて、NYタイムズ紙上で“世界一美味しい”と評されたマティーニが味わえる店。ここの「ドライ・マティーニ」は、見た目からして少し変わっている。オーダーすると、目の前に並ぶのは2つのグラス。ひとつのグラスにはベルモットでリンスしたジンが、そしてもうひとつのグラスにはベルモットが注がれているのだ。マティーニを口に含んだまま隣のベルモットを味わったり、ほのかに残るベルモットの香りを楽しみながらドライ・マティーニに口をつけたり。飲み方によって、5~6種類の味わいが楽しめる、というわけだ。
「ジンはボンベイ・サファイア、ベルモットはチンザノのドライを使っていますが、ジンとベルモットの割合は秘密。長年研究した末に見つけ出した、ベストバランスです」と話すのは、マスター・バーテンダーの田中剛人氏。約15年間の修行を経て、2005年に独立を果たした。以来、彼のマティーニを飲むために足を運ぶファンも多いという。
もともと、バンドのヴォーカルとしてインディーズ界で実績を残してきたマスター。ジャズへの造詣も深く、学生時代からソニー・ロリンズやオスカー・ピーターソンのコンサートに出かけていたという。店のBGMは、もちろんジャズ。「バーにおいて、音楽は重要なエッセンス。時間帯やお客様の雰囲気に合わせた選曲を、心がけています」と話す。
耳を澄ませば、マスターがシェーカーを振る音がジャズのリズムとシンクロしていることに気づく。スローな曲が流れているときはゆったりと、アップテンポの曲ではスピーディーにシェーキング。マスターの粋な演出が、心地良い酔いを誘う。ジャズのリズムを感じながら、究極のマティーニを味わう。酒の奥深さを、教えてくれる一軒だ。
取材・文/渡辺裕希子 写真/岡村智明
1. しっとりと落ち着いた大人の雰囲気。店内のテレビでは、ジャズライブや映画のDVDなどを放映している。
2. ソファに座って、ゆったりとお酒が楽しめる。窓際には、ムードたっぷりなカップルシートも。
3. 六本木駅から歩いて8分程度。大通りから一本入ったところにあり、隠れ家のような雰囲気。
4. 九十九里にある老舗ガラスメーカー「スガハラガラス」や「バカラ」のグラスを使用。繊細で独創的な曲線が、カクテルの美しさを引き立ててくれる。
5. 「ドライ・マティーニ」1800円。マスターが以前バーテンダーを務めていた店をNYタイムズ紙の記者が訪れ、“世界一のマティーニ”と絶賛したという。ほかに、5000種類以上のカクテルを用意。
Bar Martini
東京都港区西麻布1-14-8 第2広島ビル1F
03-5770-3450
19:00~深夜3:00
日、祝日の月
チャージ1000円


