昨今、“レコードをかける店”は数あれど、“レコードしかかけない店”となると、なかなかお目にかかれない。そんな中、渋谷にある『グランドファーザーズ』は、CDやパソコンなどのデジタル音楽とは無縁。1970年代のロックやAOR、ソウル、ディスコミュージックなど数々の名盤を、すべてアナログレコードで楽しめる、という粋なバーだ。
なぜ、レコードにこだわるのか。その理由をマスターはこう語る。「レコードの“ブチッ”、“ザーッ”という雑音が好きなんですよ。それに、レコードをひっくり返すという行為によってA面とB面、それぞれの1曲目と最後の曲が深く心に刻まれるんです。その点、CDは一度スイッチを押したら流しっぱなしだから、曲が頭に残りづらいんですよね」。なるほど、音楽データを大量に取り込めるCDやパソコンは確かに便利だが、レコードにはレコードにしかない“文化”がある。1971年の開店以来、この店ではそうした文化を大切に守り続けているのだ。
レコードのかけ方も、実にユニークだ。例えば、「TOTOのアフリカが聴きたい」とリクエストしたら、ずらりと並んだLPレコードの中から瞬時に「TOTO IV~聖なる剣」をピックアップ。ターンテーブルに置いて針を落とすと、B面5曲目の「アフリカ」が流れ始める、といった具合だ。「一枚丸ごとすべての曲が素晴らしい、というLPレコードはなかなかない。だから、その中から良い曲だけ選び出してるんです」とは、自らをレコード係と呼んでいるマスターの弁。手間と経験を要する作業を、慣れた手つきで黙々とこなしている。
「音楽とは本来、“音を楽しむ”こと。自分がかける曲が、お客さんの会話のきっかけになると嬉しい」とマスター。70年代から続く店で、当時のヒットナンバーをアナログレコードで聴く。理屈ぬきに楽しい、大人の夜が待っている。
取材・文/渡辺裕希子 写真/下村 孝
1. 1971年に、一橋大学の学生によって作られた店。当時は1950~60年代のロックを流していたという。天然木のカウンターやチェアなど、内装も雰囲気も当時のまま。
2. スピーカーはJBLの4311。カウンターに座ると、高音がちょうど耳の高さに届き、低音が上から降ってくる。音に包まれているような感覚が心地よい。
3. 約2000枚のLPを保有し、聴かせてくれる。70年代の曲がメインだが、最近リリースされた話題の新譜もレコードで入手している。
4. 開店以来のロングセラー「あたりめ」600円と、「キリンラガー(小瓶)」500円。料理はすべて手づくりで、牛すじ煮込みやおでんも人気だ。
5. JR渋谷駅からは、歩いて1分の距離。平日も休日も、深夜遅くまでなつかしの音楽が楽しめる。
グランドファーザーズ
東京都渋谷区渋谷1-24-7 渋谷フラットビルB1F
03-3407-9505
17:00~深夜3:00
無休(年末年始を除く)
チャージは深夜0:00以降のみ300円


