“ビンテージ”という冠がつくと、年代物で価値のあるものを思い浮かべるのが大方である。これがギターの世界になってくると、そんな大雑把ではいかない。
「1965年までにつくられたものをビンテージ、それ以降70年までのものをオールド、75年までのものをセミ・オールドという風に呼ぶんですよ」
とナンシー社長、岸田邦雄さんは教えてくれた。ナンシーは、名古屋に本店を構える、知る人ぞ知るビンテージ・ギターの老舗だ。渋谷公会堂前の渋谷店もお宝だらけで目が眩む。
「これはクラプトンが『Wonderful Tonight』のジャケットに使っていたブラッキーのリイシューモデル。昨年、世界限定275本で発売されて話題になったものです」
と言いながらディスプレイされているブラッキーを引っぱり出して見せてくれるのだが、われわれ取材陣は、そのギターにぶつかって事故でも起こしたら大変、とばかりによけてしまうのだった。インタビューの最中、話はビンテージ・ギターの魅力に及んだ。岸田さんは言う。
「ギター一本一本がその時代の音を持っているということに尽きるでしょうね。それは大量生産時代に入る前
の、ハンドメイドということもあるでしょう。だけどもビンテージ・ギターの場合は何年製の何々は出来が良い、というような製造年が重要になってきます。年ごとにメーカーが微妙に音色を変えているんです。ワインに似ている? そう言えなくもないですね。」
ここで岸田さんの言う“その時代”とはブリティッシュ・ロックが世界の音楽シーンを席巻した頃だ。
「僕もそうですけど、ビンテージ・ギター・ファンというのは3大ギタリストが大好きなんですよ。彼らを追いかけている内に、彼らが使ったギター、彼らの時代の音にまで関心の幅が広がっていくんですね。」
取材・文/森澤郁夫 撮影/関根則夫





