小石川界隈は、江戸時代には寺社や武家屋敷が置かれていた歴史あるエリア。夏目漱石や石川啄木など、文豪ゆかりの地としても知られている。高層マンションが建ち並ぶ現在でも、少し小道に入るだけでかつての名残を感じることができるだろう。
『CORB』は、そんな古きよき時代の匂いが残る閑静な住宅街に、ひっそりと佇むカフェだ。その昔、美容院として使われていた建物をリノベーション。建具や窓枠など古い素材の魅力をそのまま生かしつつ、シンプルであたたかみのある空間へと蘇らせた。
柔らかな光が漏れ、“静寂”という言葉がぴたりとはまる店内。そこに、ジャズやボサノバ、民族音楽などの旋律が静かに響く。スローな空気に身を委ねていると、時間の感覚を失いそうだ。
この店で調理から接客、選曲まで一人で担っているのは、オーナーの佐竹環さん。出身地の北海道でパン作りを学び、パリのブーランジェリーで2年間修行を積んだのち、2007年11月に店をオープンさせた。「人間の体にとって悪いものを、わざわざ入れる必要はない」とのポリシーから、ベーキングパウダーなどの添加物をいっさい使わず、天然酵母のパンを作り続けている。
人気メニューは、この天然酵母のパンにオーナーの実家から取り寄せた無農薬の野菜を合わせたサンドウィッチ。余分なものを何も加えずに焼き上げたパンは、素朴で力強い味わい。噛むほどに酸味と甘味が絡み合い、濃厚な野菜とともにやさしい余韻を残す。体に良くて、おいしいものを食べて欲しい。オーナーのそんな思いが、伝わってくるようだ。
すべて手づくりにこだわっているため時間はかかるが、焦ることはない。幸い、夜10時まで営業している。たまには時間を忘れて、こんなカフェで過ごしてみたいものだ。
取材・文/渡辺裕希子 写真/田頭真理子
1.アンティークのイスやテーブルが並ぶ。内装は、オーナーのご主人で建築家の佐竹勝郎さんが担当。
2-3. 入り口の販売スペースでは、スコーンや焼き菓子、北海道産無農薬の豆、手づくりのジャムなどを販売。焼き立ての食パンは、毎日10斤限定で販売。人気が高いので、事前に予約しておこう。
4.店内では写真家・親泊健さんの写真集を展示・販売している。
5.天然酵母のパンを使った「温かいサンドウィッチ」870円。具はハムチーズと季節の野菜、2種類が用意されている。よく冷えた「ハートランド」650円と一緒に楽しみたい。
CORB
東京都文京区小石川2-3-24
03-5684-2870
12:00~20:00
火(臨時休業あり)
コーヒー580円(深め600円)、紅茶(ポット)650円、ワイン(グラス)600円


