ジャーニーという店名どおり、世界や年代を、音楽の力でトリップできるバーである。
かけるのは1920~70年代を中心としたアナログレコード。ロック、ジャズ、ブルース、レゲエ、ソウル、ボサノバと、ジャンルは問わない。「この年代の音楽が好きな人にとって、ジャンルは関係ない。ジャンルとはそもそも、レコード屋が売りやすくするために作ったものですから」とは、マスターの森田啓文さんの弁。さらに、この時代の音楽にこだわる理由について、こう語ってくれた。
「まだ音楽業界が商業主義になる前の当時の音楽は、とても個性があったんです。たとえば黒人音楽は、白人社会で苦労をしてきた黒人達が、日の目をみようと一生懸命もがき苦しんだところから生まれた。たとえギターが弾けなくても、一音でもいいからいい音を出そうというミュージシャンが多かったんです。だから昔のブルースマンの曲は、音を聴いただけで誰がギターを弾いているかがすぐ分かるんですよ」
ちなみに、店にある最も古い音源は、1920年代に録音されたベッシー・スミスの「セントルイス・ブルース」。レコード盤ができたばかりの頃のもので、録音技術が発達していない当時に素晴らしい音源を残せたのは、彼女が圧倒的な声量の持ち主だったからだとか。一曲一曲にまつわるそんな物語について、マスターと語り合う人もいれば、リクエストブックを繰りつつ、ひとり静かに音楽に酔いしれる客もいるという。
店内のデザインは、電車がモチーフ。客席は電車のシートを彷彿させ、壁には網棚風の荷物置きが備えられている。窓はなく、照明を落とした店内は、まるで外界から閉ざされたような雰囲気だ。そんな空間で、数十年前のアナログの音色に集中していると、次第に自分がいつ、どこにいるのかさえ分からなくなる…まさにトリップ気分が味わえるのだ。平均滞在時間はなんと3時間。音楽好きにとっては、時があっという間に過ぎてしまうというのも納得の特別な空間だ。
取材・文/高橋かおり 写真/関根則夫
1. 年代や国を超え、トリップできるアナログにこだわるミュージックバー。
2. チャージ500円でスナック類が食べ放題。せんべいからナッツ類、麩菓子、ラムネなどがポットに入れられ、セルフサービスとなっている。スナックの旅(ジャーニー)に出て、端から端まで制覇する客もいるとか。「キリンハートランド」は700円。
3. 4ヶ所に配されたスピーカーから温かみのある音楽が流れる。音量は、会話を楽しめる程度。
4. 電車のシートを思わせる座席。網棚もユニーク。
5. アナログレコードは2000枚ほどある。
Bar Journey
東京都大田区蒲田5-11-12 フェニックスMSビル2階
03-3739-7154
19:30~翌1:00
日・祝
チャージ500円、キリンハートランド700円ほか


