世にジャズバーは数あれど、「アットホームさ」という点で群を抜いているのが、三軒茶屋の『Jazz
Inn Uncle Tom』。1977年の開店以来、独特の雰囲気を守り続けている小さな老舗だ。
「僕の親父は、いわゆる“私語禁止”のジャズ喫茶が嫌いだったんですよ。だから、ジャズを楽めておしゃべりもでき、お酒も飲める。そんな店を作ったんです」。そう話すのは、マスターの“てっぺいさん”。偏屈だけど、物知りで暖かい。皆に愛された父親の“アベちゃん”が旅立った後、22歳の若さで店を引き継いだ。「マスターになるまではジャズの“ジャ”の字も知らなかったんです」と笑うが、常にジャズが流れる家庭で育ったことから選曲眼は確か。約2000枚のレコードから、その日の客層や雰囲気にぴったりと合った1曲をかけてくれる。
マスターとともにカウンターに立つのが、ママの“おスミさん”だ。こちらは、出産の前日に武道館のジャズライブに出かけたという、筋金入りのジャズフリーク。とはいえママの好みは、正統派のジャズを愛するマスターとは少々異なる。「実は私、フリージャズが好きなのよ。でも、フリージャズは苦手っていう人が多いでしょう? だから、いつもレコードをかけると息子に怒られるのよ」とお茶目に笑う。料理好きの彼女が作る『手作りハンバーグ』も絶品で、夕食がてらジャズを楽しみに来る人も多い。
常連客は、「ただいま。なにかある?」と言いながら店を訪れる。まるで、我が家に帰ったかのような安心感。初めての客も、数時間で店に馴染むことが多いという。やさしい空気に身を任せて、とことん酔いたくなる一軒だ。
取材・文/渡辺裕希子 写真/田頭真理子
1-2. 1999年9月に改装。それまで2階にあった店を1階に移転させた。「移転前は、隠れ家というよ
り物置小屋のような雰囲気でした(笑)。以前に比べると、入りやすくなったと思います」とはマスター
の弁。
3. アンプは3代目のSANSUI AU-α707NRA、ターンテーブルは2 代目のDENON DP-1200、スピーカ
ーは2代目のJBL 4312XPを使用。
4. ママとマスターは、実の親子。息の合ったトークで、場を和ませてくれる。おすすめの曲を質問してみるのもいいだろう。
5. 「手作りハンバーグ(サラダ付き)」750円は、柔らかくて肉汁たっぷり。オリジナルソースが味の決め手だ。「テキーラサンライズ」は750円。
Jazz Inn Uncle Tom
東京都世田谷区太子堂1-15-15
03-3410-7903
18:00~深夜1:00(LO)
無休
アルコールチャージ600円(ソフトドリンク、食事のみの場合はノーチャージ)。ウイスキー600円~、焼酎650円~、日本酒600円~、手挽きホットコーヒー500円、卵
とチーズの味噌おじや600円


