「学芸大学」といえば、今や学生や若者が行き交う華やかな街。個性の薄いチェーン店が増えてきた駅前にある、昔ながらの雰囲気の喫茶店。それが、コーヒーと音楽を愛する夫婦が30年前に開いた「珈琲美学」だ。
BGMは、マスターが選んだクラシック音楽。「若い頃は名曲喫茶に通いつめていた」というだけあって、音響設備も本格的だ。お店で使われている木製の椅子は、店名が彫刻されたオリジナル。壁には2人の好みで集めた絵画が飾られ、職人に作らせた銅製ランプからは暖かな光がもれる。
「インテリアも雰囲気も、30年前から何ひとつ変わっていません。私たちにとってこの店は、自分の家よりも落ち着ける空間なんですよ」とママ。初めて訪れる人でも、なぜか懐かしく思えるから不思議だ。
コーヒーを淹れるのは、マスターの役目。「最近は、深煎りのコーヒーが流行していますよね。でもうちでは、豆の持ち味を生かすために浅煎りの豆をたっぷりと使っています。コーヒーを飲んで、『おいしい』と言っていただけるのが一番の喜びです」とマスター。豆の挽き方は、細かすぎず荒すぎず。蒸らし方にもこだわった熟練の技術で、酸味や苦味、香りを余すところなく引き出している。
毎月第2・4木曜の夜には、ワインやビールを飲みながらジャズやボサノバの生演奏が楽しめる。こちらは、ママが企画。ときには、フレンチやイタリア料理を用意したディナーショーも開催している。マスターが「そこらへんのレストランよりも美味しい」と評するママの手料理を楽しみながら、目の前で音楽を愉しむ。ゆったりとした音楽会は、酸いも甘いも知る大人たちに好評だ。
学生時代に通っていた客が、10数年ぶり訪ねてくることも珍しくない。「皆さん、学芸大学の街が変わったことに同時に、この店が変わっていないことに驚いているようです(笑)」。夫妻のこだわりと優しい空気に包まれて、昔と変わらない和やかな時間が流れていく。
取材・文/渡辺裕希子 写真/関根則夫
1.学芸大学駅からは歩いて1分程度。ビルの階段を下りると、まるで時間が止まったようなクラシックな空間が広がる。
2.昼間のBGMは、モーツァルトやバロック音楽など。音楽に耳を傾けながら、おしゃべりも楽しめる雰囲気だ。
3.銅で作られたランプにも、店名が彫られている。手作りの家具のひとつひとつに、夫妻のこだわりが見える。
4.コーヒーフロート780円は、アイスをバラの花びらに見立てた芸術品。「手早く作らないとアイスが溶けてしまう。一杯一杯が勝負です」とマスター。
珈琲美学
東京都目黒区鷹番2-19-20-B1
03-3710-1695
10:30~22:45、日曜11:00~21:00
月(祝日の場合は翌日休)
ライブ開催時ミュージックチャージ2500円~


