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『ブレードランナー』製作から25年ーー究極の5枚組DVDボックス


ブレードランナー

 はっきり言って値段は高い。しかし満足度も非常に高かった。1982年に公開されたリドリー・スコット監督の傑作カルト・ムービー(あえて、そう呼ばせてもらおう)『ブレードランナー』の25周年記念DVD-BOX。正式には『ブレードランナー アルティメット・コレクターズ・エディション・プレミアム』なんていう、まるで必殺技か何かのように大仰な名称が冠せられている。

 おなじみの3つのバージョン(オリジナル劇場版/インターナショナル劇場版/ディレクターズカット最終版)。幻の存在だった試写用のワークプリント版。さらに今年発表されて話題を呼んだファイナル・カット版(画質も驚くほど向上!)。といった現存する5バージョンすべてを収録し、なんと8時間を超える映像特典を加え、さらにスピナーのミニカー(まずまずの出来。ちゃんとガルウィング式ドアは上方向に開く)などのおまけまでセットにした、とんでもなさすぎる逸品だ(おまけなしで値段を抑えたパッケージもあり)。 

 で、やはり注目すべきは映像特典。 
 購入して真っ先にディスク4〈「Enhancement Archive〉の中の「Fabrication」の、そのまた中にある「Deleted and Alternate Scenes」を再生したのだが、ほとんどが初出となる未公開シーン集だけあって目から鱗(もちろん人造蛇の鱗!)がボロボロ落ちまくり。そして、そのままディスク2の長編ドキュメンタリー『Dangerous Days: Making Blade Runner』に突入。あきれるほど膨大なインタビューを軸にした丁寧な作りに興奮しているうちに、あっという間に3時間半(!)が経過してしまった。残念ながら当初インフォメーションのあった英国チャンネル4製作の名作ドキュメンタリー『On The Edge of Blade Runner』(海賊盤でお世話になった方も少なくないだろう)は版権の問題で収録されなかったが、なんのなんの、という感じ。だって、このBOXさえあれば迷セリフ「2つで充分ですよ」の謎も解けるし(えび天という説が有力だったが、その真相は×××!)、それからホッケーマスクのセクシー・ダンサーだってバッチリ拝めるし、あろうことか巨大スクリーンに映し出される「強力わかもと」のCMの元素材まで見れてしまうのだ! 

 いかん。気を緩めると、つい熱くなってしまう。なにしろ80年代中盤に高校生だった僕は立花ハジメの「REPLICANT J.B.」(レプリカントという言葉は、この映画のために生み出された造語)や坂本龍一の「Broadway Boogie Woogie」(たくさんのセリフをサンプリングしている)を経由して『ブレードランナー』の存在を知り、ここに描かれているデッドテックな近未来像(それまでは未来といえば決まってハイテクな世界だった!)に完全にノックアウトされ、そして比喩ではなくて本当にテープが擦り切れてしまったほどビデオを見返した。そんな心地よい悪夢(電気羊の? ユニコーンの?)のような日々を、また再び過ごせるのだ。値段が高いなんていう理由で躊躇してる場合じゃないって。  

文=大野貴史




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ブルース・ハーモニカの奥深さを徹底的に教えてくれるシリーズが登場


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 ロバート・アルトマン監督のハードボイルド映画『ロンググッドバイ』(73年)のラストシーン。自分を裏切って逃亡した友人をメキシコの田舎町で探してあてたフィリップ・マーロウは、その友人を問答無用に射殺する。振り向きもせず並木道を帰るマーロウ。そのとき友人の共犯者でありマーロウ自身も気にかけていた愛人のクルマとすれちがうが、マーロウは彼女には見向きもせずに歩き続ける。『第三の男』をなぞった演出だ。やがてマーロウはポケットからハーモニカを取り出し、それを両手にはさんで吹き鳴らしながら去っていく。レイモンド・チャンドラーの原作にはないシーンだが、音楽好きのアルトマンらしい、気の効いた演出だ。このシーンが象徴するように、ハーモニカは男がひとりでいたいときによく似合う。ハーモニカの根強い人気はそんなところにあるのではないだろうか。
 「ブルース・ハーモニカ」に焦点をあてて、その演奏方法や構造、楽しみ方などを徹底的に紹介しようというガイドブックシリーズが登場した。題して「The Real Book  Blues-Harmonica」。一見、無愛想な教科書のような体裁だが、中を開いて見ると、ブルース・ハーモニカの基本的な知識からマニアックな情報まで多彩な内容で楽しめる。
たとえば、「ホーナー」「トンボ」「スズキ」など、各メーカー別にそれぞれの特徴を解説した項目などは、これまでの教則本にはなかった画期的なものだ。また、「Ⅱ」に収録されている「ベンドが初めてできた時…」というコラム記事も面白い。「ベンド」というのは、ブルース・ハーモニカ特有の、強く吸いながら音を曲げる(ベンドする)奏法で、これができて初めてブルース・ハーモニカらしく聞こえるのだが、このベンドが「初めてできた時」の感想を、妹尾隆一郎のような第一人者からミッキー・カーティスといった人まで、8人のハーピストからコメントを取っている。なんなくベンドができた人から試行錯誤を経てようやく「音が曲がった」人まで、それぞれが真剣に語るそのエピソードが面白い。
本シリーズは、このように、ブルース・ハーモニカのことが知りたいという人の要求にていねいに、退屈させずに応えてくれる内容となっているが、監修者によるとシリーズⅩまで展開したいとのこと。それも荒唐無稽な話ではないと思えるほどに、ハーモニカの世界は奥が深くて面白いことを教えてくれるシリーズだ。  

文=編集部
 




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編集者魂が手に入れたロックからの贈物


わが青春のロック黄金狂時代―ビートルズからボン・ジョヴィまで(角川SSC新書4)
東郷かおる子著

 アンコールを終えて予定の演目がすべて終わると会場に明かりがつき、その合図とともに床を踏み鳴らしていた観客はぴたりとアンコールの催促をやめて静かに家路につく……いつごろからだろうか、ロックのコンサートがこんなにお行儀よくなったのは。「編集者としての始まりが、ロック黄金期の始まり」だったという著者は、そんなお行儀のよさとはかけ離れた、ファンもレコード会社もメディアもプロモーターもまったく洗練されていない、ロック原始時代とでもいうべき状況から手さぐりで日本の洋楽市場を切り拓いてきたパイオニアの一人だ。 
 洋楽専門誌『ミュージック・ライフ』の名物編集長として活躍した著者だが、その編集部在籍時代は、発行部数が2万部前後だった60年代末から洋楽ブームに乗って20万部を誇るお化け雑誌にまで変貌を遂げる80年代までとピタリと一致する。著者はあくまでも控え目だが、その成長を支えたのは、取材困難なビッグアーティストたちに果敢に体当たりしていく著者のプロフェッショナリズムと多くの読者に楽しんでいただきたいというサービス精神にほかならないことが、本書を読むとよくわかる。 
 そうした編集者魂への贈物として著者が手にすることのできたレッド・ツェッペリン、クイーン、エリック・クラプトン、サンタナなど、数々のロック・スターにまつわるそれぞれのエピソードはすこぶる面白い。あの時代を過ごした者にとっては「ああ、そうだったのか」と謎解きをされるようなゾクゾクとする楽しみがあるだろうし、また、同時代体験を逃した者にとってもきっと、音楽への愛着がさらに増す興味深い話であるに違いない。  

文=編集部
 




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優れた音楽とジャケットを読み解く、クラシックファンのバイブル


LPジャケット美術館

 LPで育った世代にとって、音楽メディアの中心がCDに移って一番さみしかったのは、ジャケットのサイズが小さくなったことかもしれない。縦横30cmの正方形というLPジャケットの大きさは「画面」としての魅力があった。逆にいえば、LPジャケットのサイズは、デザイナーの創作意欲を刺激するサイズでもあるのだ。 
 ビートルズの『Abbey Road』などを持ちだすまでもなく、LPジャケットのデザインはさまざまな逸話や伝説を生んできた。また、デザインの名作としてしられるジャケットも多い。ジャケットの話題といえばロックやポップスに偏りがちだが、クラシックだってどうしてなかなか、がんばっているのである。 
 この本は、「ジャケットのデザイン」という切り口でクラシックの名盤100枚を紹介している。著者はLPレコードの世界的なコレクターである高橋敏郎氏。5万枚におよぶ高橋コレクションの中から厳選された100枚とはどんなものだろうか。 
 「ロマン派」も「印象派」も、音楽用語であるとともに美術用語でもある。ショパンとドラクロワ、ドビュッシーとモネなどにかぎらず、音楽家と画家は互いに刺激を与えながら芸術の新たな地平を切り開いていった。先ごろ亡くなったムスティスラフ・ロストロポーヴィチも、シャガールと親交が深い。旧ソ連で不自由な演奏活動を強いられていたロストロポーヴィチが西側のオーケストラ(パリ管)を初めて指揮した『シェーラザード』のジャケットは、シャガールから献呈された美しい絵が飾っている。 
 本書では、さまざまなジャケットとそのエピソードを紹介しているが、LP時代はちょうど戦後の東西冷戦という時代とも重なり、全体に時代性を感じさせるジャケットが印象的だ。ジョン・F・ケネディの前で演奏するパブロ・カザルスなどその典型であろう。他にも日本人デザイナーによる傑作、歴史的名盤のそっけないジャケット(ホロヴィッツの復活ライブ)など、見飽きることがない。エピソードの紹介も秀逸である。 ちなみに、掲載されているジャケット写真は実物のCDと同サイズになっている。こういう小ワザを効かせるのは新潮社の「とんぼの本」シリーズの特徴かもしれない。音楽ファンとしてリクエストするならば、演奏者や曲名の索引なども用意していただきたかったと思う。  

文=稲本義彦 写真=田頭真理子
 


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