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ブルース・ハーモニカの奥深さを徹底的に教えてくれるシリーズが登場


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 ロバート・アルトマン監督のハードボイルド映画『ロンググッドバイ』(73年)のラストシーン。自分を裏切って逃亡した友人をメキシコの田舎町で探してあてたフィリップ・マーロウは、その友人を問答無用に射殺する。振り向きもせず並木道を帰るマーロウ。そのとき友人の共犯者でありマーロウ自身も気にかけていた愛人のクルマとすれちがうが、マーロウは彼女には見向きもせずに歩き続ける。『第三の男』をなぞった演出だ。やがてマーロウはポケットからハーモニカを取り出し、それを両手にはさんで吹き鳴らしながら去っていく。レイモンド・チャンドラーの原作にはないシーンだが、音楽好きのアルトマンらしい、気の効いた演出だ。このシーンが象徴するように、ハーモニカは男がひとりでいたいときによく似合う。ハーモニカの根強い人気はそんなところにあるのではないだろうか。
 「ブルース・ハーモニカ」に焦点をあてて、その演奏方法や構造、楽しみ方などを徹底的に紹介しようというガイドブックシリーズが登場した。題して「The Real Book  Blues-Harmonica」。一見、無愛想な教科書のような体裁だが、中を開いて見ると、ブルース・ハーモニカの基本的な知識からマニアックな情報まで多彩な内容で楽しめる。
たとえば、「ホーナー」「トンボ」「スズキ」など、各メーカー別にそれぞれの特徴を解説した項目などは、これまでの教則本にはなかった画期的なものだ。また、「Ⅱ」に収録されている「ベンドが初めてできた時…」というコラム記事も面白い。「ベンド」というのは、ブルース・ハーモニカ特有の、強く吸いながら音を曲げる(ベンドする)奏法で、これができて初めてブルース・ハーモニカらしく聞こえるのだが、このベンドが「初めてできた時」の感想を、妹尾隆一郎のような第一人者からミッキー・カーティスといった人まで、8人のハーピストからコメントを取っている。なんなくベンドができた人から試行錯誤を経てようやく「音が曲がった」人まで、それぞれが真剣に語るそのエピソードが面白い。
本シリーズは、このように、ブルース・ハーモニカのことが知りたいという人の要求にていねいに、退屈させずに応えてくれる内容となっているが、監修者によるとシリーズⅩまで展開したいとのこと。それも荒唐無稽な話ではないと思えるほどに、ハーモニカの世界は奥が深くて面白いことを教えてくれるシリーズだ。  

文=編集部
 


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