北欧ジャズの歌姫、マルガリータ・ベンクトソン&リーサ 共演ライブ
ヨーロッパは第2次世界大戦以前から、ジャズのもっともよき理解者であり、庇護者であり続けたが、そうした歴史や伝統のせいか、現在も北欧を筆頭にジャズシーンはアメリカよりも活発でミュージシャンたちの創作意欲も旺盛のようだ。ひらたくいえば、ヨーロッパではいまも“まっとうなジャズ”が生き続けている。
今年リリースされたスウェーデン出身の女性歌手2人のそれぞれの新作は、そんなヨーロッパ・ジャズの奥深さを十分に伝えてくれる内容になっている。
まず1枚は、キャリア20年を越えるベテランにして初のソロ・アルバムを発表したマルガリータ・ベンクトソンの『アイム・オールド・ファッションド』。50年代のウエストコーストジャズを連想させるタイトルやアートワークのとおり、50年代的なジャジーな気分をたっぷりと味あわせてくれる。ニューヨークのレストランで紙ナプキンに好きなスタンダードを書き連ねたことから選曲が始まったとベンクトソンはライナーノートで述懐しているが、ここで取り上げられているのはまさに珠玉の名曲ばかり。精緻な技巧と卓越したソプラノ・ヴォイスを聴かせてくれるベンクトソンも素晴らしいが、ジャズの往年の輝きを見事に再現してみせたアレンジャーやバック・ミュージシャンたちのパフォーマンスも秀逸である。
もう1枚は、41歳の手練手管を見せつけたベンクトソンとは対象的に、女優もこなす若きクール・ビューティ、リーサの『エンブレイサブル』。スウェーデン・ポップスにも通じる軽やかな表現を身にまとったリーサだが、本作での選曲はかなりオーソドックスというか地味。浮ついたところはけっしてなく、巧妙なアレンジやバックのサポートが、リーサのウィスパリング・ヴォイスをジャズとして巧く仕上げている。スウェーデンの歌姫といえば、ビル・エヴァンスとの共演で知られるモニカ・セッテルンドの名前がつねに挙がるが、それももう何十年も前の話。そろそろ彼女たちのような新しい存在に目をむけてもいいだろう。
ところで、このマルガリータ・ベンクトソンとリーサが11月にそろって来日し、ライブ共演を行なう。彼女たちの歌声を生で聴けるのももちろん素晴らしいことだが、さらに特筆すべきことは、2人のそれぞれの新作のレコーディングメンバーがほぼそろって来日するということだ(リーサと共演したギターのヤン・オッテセンは除く)。彼女たちのこのライブにかける“本気度”がそこにうかがえる。ヨーロッパ・ジャズのレベルの高さにじかにふれることのできる最良の機会にわれわれは恵まれたのである。

