LIVE REPORT~ロックの真髄を見せつけられたザ・フー初の単独来日ツアー
■The Who Japan Tour 2008
11/13(木) 大阪城ホール
11/14(金) 横浜アリーナ
11/16(日) さいたまスーパーアリーナ
11/17(月) 日本武道館
11/19(水) 日本武道館(追加公演)
【 11/17(月) 日本武道館 SET LIST 】
1. I Can't Explain
2. The Seeker
3. Anyway Anyhow Anywhere
4. Fragments
5. Who Are You
6. Behind Blue Eyes
7. Relay
8. Sister Disco
9. Baba O' Riley
10. Eminence Front
11. 5:15
12. Love Reign O'er Me
13. Won't Get Fooled Again
14. My Generation - Naked Eye
---------------------------------
15. Pinball Wizard
16. Amazing Journey
17. Sparks
18. See Me Feel Me - Listening To You
19. Tea And Theatre
ザ・フー・ファンにとって悲願だった初の単独来日ツアーが終了してから数週間。まだ生々しい記憶としてライヴの様子を克明に思い出せる反面、何だか総天然色のリアルな夢でも見ていたかのような不思議な感覚に促われたままでいる僕のようなファンも多いに違いない。仕事の都合で大阪には行けなかったが、それでも関東エリアの計4回すべてを観に行ったのは、横浜アリーナのライヴが予想以上に素晴らしく、激しく心を揺さぶられたからだ。
今ではオリジナル・メンバーが2人しかいないザ・フーのどこがそんなに良いのかと、観ていない人は訝るかも知れない。しかしピート・タウンゼンドがガツンと一発叩くようにコードをカッティングし、ロジャー・ダルトリーが歌い出せば、これがザ・フーなんだという音世界が出現し、瞬時に会場の空気を支配してしまうのは、やはりロックの歴史を作ったオリジネイター特有の強烈なオーラが今も健在だからだろう。
今回、ライヴを観て改めて感心したのは、ピートもロジャーも他のヴェテラン・ロック・バンドのメンバーと違い、歳を取っても決して角が取れたような洗練とは無縁の粗っぽさを残していたことだ。その粗っぽさは危うさと言い替えてもいいかも知れないが、未だにこれぞロックというスリリングでダイナミズム溢れるサウンドを鳴らしていたのに驚かされた。何しろ横浜アリーナでは、機材の調子が良くないことに苛立ったピートが、スタッフに向かって“クビ”のジェスチャーをするなど、いくら還暦を過ぎようがいったんステージに立てばその場がまるで戦場でもあるかのように殺気立っていたのに、正に“老兵は死なず”の心意気を見た思いがした。
確かにピートは昔のようにジャンプは出来ず、年齢による体力の衰えを隠せなかったのは事実だ。しかしながら腕を思い切り旋回してギターを弾く本家本元のウィンドミル奏法は、やる度にそれだけで会場が沸くほどカッコ良く、ロジャー・ダルトリーのマイクぶん回しアクションと共に、世界一アグレッシヴでラウドなハード・ロック・バンドだった60~70年代の片鱗を見せてくれたのに胸を熱くしたファンも多かったに違いない。
今回のツアーでのセット・リストは、別表のように基本的には02年以降の北米ツアー以降、全体的な曲構成にそれほど大きな変化はない。それはデビュー・シングルの01で始まり、初期のナンバーを続けて3曲ほど演奏した後にその時点での新曲を挟み、各時代の人気代表曲を披露しながら、終盤で『四重人格』からのハイライト・ナンバーを2曲、本編最後にキラー・チューンの12と13で盛り上げ、アンコールは『トミー』のダイジェスト・メドレーで再度クライマックスを迎えるという流れだ。
それだけにジョン・エントウィッスルが急逝した02年の以降は不動のバンド・メンバーと繰り広げる演奏の一体感もさすがだった。因みにバック・メンバーで一番の新顔は名セッション・ベーシスト、ピノ・パラディーノで、それ以外は96年の“QUADROPHENIA TOUR”から参加したザック・スターキー、ピートの弟、サイモン・タウンゼント(g,vo)、そして70年代からサポート・メンバーとして参加しているジョン“ラビット”バウンドリック(key)という気心の知れた顔触れだけに、もうパーマネントなバンドと言って良いほど息が合っていたのも当然だろう。そして今回改めて思ったのは、リンゴ・スターの息子でオアシスの仕事を蹴って参加したザックのドラミングは、キース・ムーンには及ばないまでも、他の誰よりもザ・フーにフィットした最良のドラマーだということで、彼の参加があったからこそ、ザ・フーとしてここまで長い間、活動を続けることが出来たに違いない。そしてそのザックが、確か5歳だったかの誕生日にキース・ムーンからオモチャのドラム・キットをプレゼントされていたという事実に、不思議な因縁を感じないわけにはいかない。
コンサートの最後、『トミー』からのメドレーで何度目かのクライマックスを迎えてライヴが終わると、しばらく鳴り止まない大歓声に応えながら、アコースティック・ギターを手にしたピートとロジャーが2人だけで歌ったのが19だった。しっとりと厳かに歌い上げられたこの曲のスピリチュアルな響きは、喩えようもなく美しく、讃美歌のように会場に響き渡っていたのが今でも耳から離れない。
「すべてが上手くいっていたのに、一人が失敗したんだ/夢が脱線した瞬間、一人はいなくなり/一人は正気を失い/一人は、そう私/みなが悲しい思いをした/みな悲しいのだから、この肩にもたれていいんだよ/物語もこれで終わる/たくさんの歌が今もくすぶり続けている/僕らはそれを一つになって演奏した/今は歳を取ってしまったけど/みなが悲しみ、自由の身となった/ステージから降りる前に/2人でお茶でも飲まないかい/この会場で2人きりで」(「Tea And Theatre」より)








