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2009.04.16UP

#82 古市コータロー「ファッションが重要、だからジョージが好き」

●レコード・ジャケットがかっこよかった

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――オフィシャル・プロフィールの"好きなCD"に『ホワイト・アルバム』を挙げてますね。

ビートルズに関しては全部好きなんで、訊かれたタイミングで変わると思います(笑)。あのときは『ホワイト・アルバム』が相当好きだったんでしょうね。今日訊かれたら『ウィズ・ザ・ビートルズ』かな? って感じだもん。どれも好きだから。

――ビートルズとはどんな風に出会ったんですか?

小学校4年生くらいのときですけど、ある日ポータブル・プレーヤーを手にいれて、こうなるとレコードが要るなぁ、と。その頃からレコード=ビートルズだったんですよ、もう。それくらい有名だったというか、ビートルズはいいってどこかで刷り込まれてたんでしょうね。で、高田馬場の中古レコード屋に買いに行きました。新品を買わないとこがいいですよね(笑)。それまでも母親のパチンコの景品のフィンガー5のシングルとかは持ってたんですけど、ちゃんとしたレコードを買おうと思って買ったのがビートルズでした。

――どのアルバムだったんですか?

それがですね、『ステレオ!これがビートルズVol.2』っていう来日記念盤。曲はほとんど『ウィズ・ザ・ビートルズ』と同じなんですけどね。まぁジャケットがよかったんだと思います。自分の中でビートルズっていうとまだああいうクリーンな髪形でスーツで、っていうイメージだったんで。毎日聴いてました。「オール・マイ・ラヴィング」とか好きだったなぁ。その後は、お兄さんがいる友達の家に行ってレコードを聴かせてもらったりとか。いい時代ですよねぇ。今はパソコンがあれば簡単に聴けちゃいますからね。次に買ったのがシングルの「カム・トゥゲザー」、B面が「サムシング」。ジャケットがすごくかっこよくて。まったく知らないビートルズがそこにいたわけですね、ルックスも含め。

――いきなりそこまで飛んじゃった。

これもビートルズなの? みたいな。次は、目白に住んでたんですけど池袋の東武デパートに買いに行ったんですよ。シングルの「ザ・ロング・アンド・ワインディング・ロード」。これもジャケットがかっこよかった。『レット・イット・ビー』のジャケットにブルーのソラリゼーションがかかってるの。その頃はポールが好きだったんですけど、今は断然ジョージが好きですね。ファッション・センスもいいし、ギタリストとしてもいい。ボトル・ネックとか相当いいですよ。音楽的にどうこうじゃなくて単純に「サムシング」にしびれたし。あれはクラプトンが弾いてるとかさんざん言われましたけど、ジョージが弾いてると思います。いいですよねぇ。なんていうのかなぁ...普通のギタリストよりちょっとズレてる気がする。例えば普通だったらもっとブルースっぽい指癖が出たりすると思うんですけど、ジョージはもうちょっと練られてる気がする。

――話を戻すと、中学に入ってからもずっとビートルズ一筋?

そうです。ちょうど小学校を卒業して中学に入る前の春休みに、『レット・イット・ビー』を毎日聴いてましたね。だからこの、ちょうど寒さが薄れて暖かくなるときって「トゥ・オブ・アス」聴くときゅんと来ちゃうんですよね~。あの♪ユーアンドアイハブメモリー~のところを聴くと、本当にね、思い出すの、春の感じを。

――映画でもリハのときはジョンとポールが1本のマイクで楽しそうに歌うんですよね。

そうですよね。映画の『レット・イット・ビー』も大好きで、20歳くらいのときにテレビでやったやつを録画してセリフを暗記するくらい見ました。コレクターズでも加藤くんと『レット・イット・ビー』ごっことかスタジオでやってますから(笑)。リハーサルでジョージが感電したりするところを真似したり(笑)。

――でもあれはアルバムとしてはそんなに評価が高くないですよね。

すごい好きですけどね。あの頃ってクラプトンが「レイラ」を作るちょっと前くらいで、多分業界的にはサイケデリックの次にスワンプが来る頃でしょ。『レット・イット・ビー』にもそういう要素があると思うんですよ。ビートルズ版スワンプまでは行かないけど、『オール・シングス・マスト・パス』は完全にジョージ版スワンプでしょ。フィル・スペクターがやったからそうは聴こえないけど。あの頃デイヴ・メイスンもそういうアルバムを作ってるし、そういう流れの一環にあるアルバムなような気がするんですよ。だから僕はすごく好き。でも『ネイキッド』は正直あんまり...(笑)。「レット・イット・ビー」のハイハットのディレイがないのが寂しくて聴いていられない。小6の誕生日だったかなぁ、母親にアルバムの『ヘイ・ジュード』を買ってもらったんですよ。あれはアメリカ編集盤じゃない? 邪道っちゃ邪道なんだけど、あのジャケットがよかったんだよねぇ。あのイメージが好きなの、ビートルズって。またジョンがさ、ちょっとアングラっぽい雰囲気のニュアンス持ってたでしょ。僕もアングラ好きだから、早速そういうところに開花していたのかなぁ。すごい惹かれましたね。ちょっと近寄りがたいというか。

――初期のかわいい感じより後期が好き。

後期のほうが好き。でも音的には自分が年とってきたから、『ウィズ・ザ・ビートルズ』みたいなああいうハツラツとした感じにすごく憧れるんだよね。いいなぁと思う。

――今の年ではできないものがある?

絶対できないし、最高にいい。「プリーズ・ミスター・ポストマン」とかしびれるもんね。良くて死んじゃったもん、あれ。

――良くて死んじゃった(笑)。ギターを持ち始めたのはいつ頃ですか?

中1のときに買うんですけど、弾かなかったです。ギタリストっていうものに憧れてただけで、音楽の成績も悪かったし、弾けるなんて思ってないですからね。でもギターを持ちたくて、すごく憧れて、お年玉を貯めて買いました。ビートルズをコピーするようになったのはすごく後ですね。難しいんですよ、特にジョンの癖が。「ディグ・ア・ポニー」とかすごく面倒くさい。でも「レット・イット・ビー」のソロをポールが弾いてるバージョンはすごくコピーしましたね。ああいうバラードに激しいギター・ソロが来るのがすごい衝撃で、あの思い切りのよさが作者ならではというか。僕がギタリストとして参加してたら気を使ってもう少し大人しくするだろうし(笑)。そういった意味でもジョージのギター・ソロが好きだったりしますけど。バンドをやりたいと思ったのはパンクが出てきたときですね。それまでは音楽ってもっと難しいと思ってた。ビートルズも譜面なんか目をつむっても書けるような人たちだと思ってたし。パンクが出てきたときに音楽が身近になってやりたくなった。ビートルズの『ステレオ!これが~』「カム・トゥゲザー」、その次くらいにびっくりしたのがピストルズ。当時13歳くらいの自分に身近に感じられたっていう、それがリアルタイムの良さですよね。ビートルズは後追いでしたから。

――ポール、ジョージ、リンゴの来日公演は見てますか?

ポールとジョージは見てます。断然ジョージがよかったなぁ。ポールは「フール・オン・ザ・ヒル」でピアノが上に上がっちゃったからなぁ(笑)。それにくらべるとジョージとクラプトンのは質素というか、ミュージシャンだという感じがしてかっこよかった。クラプトンもよかった。クラプトンは僕、欠かさず見てますけど、あのときのクラプトンはもう最高。だって1曲目が「アイ・ウォント・トゥ・テル・ユー」でしょ? あのギター・ソロが終わったときにうちの加藤くんと顔を見合わせて「すげ~」って言っちゃったもん。東京ドームであんなギターの音がする人を初めて見た。ぞくぞくしちゃった。今回(2009年2月)のクラプトンに限って行ってないんだけど、「イズント・イット・ア・ピティー」やったらしいね。たまにそういうことやるんだよねぇ。


●イギリスのものはリアルに感じる


――コレクターズといえば今日本におけるモッズの親分的な立場ですけど、イギリス的なものに最初に惹かれたのはやっぱりビートルズだった。

ビートルズですよ。次がパンクで、モッズ。そんなにイギリスがどうこうとか文化とか気にしたことはないんだけど、気づいてみるとイギリスのものが好き。特に最近はまたたそうなってきちゃった。アメリカで好きなロックもいっぱいあるんだけど、やっぱりイギリスのソリッドな音が好きだなぁ、と最近改めて思いますね。リッケンバッカーの音にぐっときちゃうのは、生まれ持ってる好きなものの反応のしどころがそうなんでしょうね。イギリスのほうがアメリカよりリアルに感じるしね。

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――最初にイギリスに行ったのはいつですか?

10年くらい前にレコーディングで1回行っただけです。チェルシーというか、サウスケンジントン。キングスロードがすぐ近くで、最初は感動したけど2日くらいで飽きちゃった(笑)。やっぱりそういう永年憧れたアーティストがいた街だからいる間はずっとワクワクしてレコーディングしてましたけど...でも今40 日いろって言われたらキツイなぁ。特に食べ物がね。そのときもチャルメラとか買って作ってましたけどね。

――キングスロードはパンク発祥の地だから、行ったら一応、端から端まで歩きますよね。

やっぱ歩きますよねぇ。僕も当然歩いたし、ヴィヴィアン(ウエストウッド)の店にも行ったし。だからアビー・ロードにも行けばよかったなぁ、と思って。あえて行かなかったんですよ。おのぼりさんみたいで、イヤで。今思うとおのぼりさんでもいいから行けばよかった。でもそういう足跡巡礼とかよりはジョンが着てるのと同じ柄のTシャツがほしいとかそういうタイプですね。ロック・ミュージシャンが何年の何月何日に着てたTシャツを復刻するっていうブランドがあるんですよ。そこのジョンと同じTシャツを何枚か持ってる。

――ファッションが重要。

重要。だからジョージが好きなんですよ。『レット・イット・ビー』の映像のジョージは相当かっこいいよ。いちばん最初がスーツのかわいい4人組で、それから個人的にわずか数ヶ月で「カム・トゥゲザー」のジャケットに行っちゃう、その変化、チェンジ。あの8年間にあれだけ変わった。そう思うと自分なんか全然変わってなくて不思議ですね。欲望としてはあれくらい激しい変化に憧れますけどね。まぁ時代も違ったんでしょうけど。

――ジョージが亡くなったときはショックでした?

ショックでした。亡くなるちょっと前にジュールズ・ホランドのアルバムにジョージの作品も入ってて、それがすごいよかったんだよなぁ。あとジョージがやっぱりいいなと思ったのは「リアル・ラヴ」だね。あれはやっぱりジョージ・マジック健在だと思いましたね。

――ジョージと同じ服は持ってないんですか?

持ってないなぁ。Tシャツとかでジョージはあまり勝負しなかったから。いかにもヨーロピアンって感じだったから。ジョンはTシャツが多かったから真似しやすい。昔ビートルズ展みたいのがあって、ジョージがルーフトップ(映画『レット・イット・ビー』の最後のライブ・シーン)で着てた毛皮のコートが飾ってあったんですよ。"絶対に手を触れないでください"って書いてあったけど、触れましたね(笑)。警備員もいたけど、(人差し指で→)ピッて。あれだけは絶対に触りたかった。中1のときかな、うちの母親があれと同じようなのを持ってて、借りて着てたもん。真似したい一心で。それくらい、あのとき展示してあったすべてのものの中でジョージの黒の毛皮だけは特別でした。



取材・文/佐々木美夏



古市コータロー(ふるいち こーたろー)
ミュージシャン


1964年5月30日生まれ。東京都出身。86年、ブリティッシュ・ロックに影響を受けたメンバーが集まり、コレクターズ結成。87年11月アルバム『僕はコレクター』でメジャー・デビュー。その後20年以上に渡って第一線で活躍し続け、若いミュージシャンたちからも圧倒的な支持を受けている。09年5月 10日・6月7日・7月5日・8月23日には渋谷クアトロでマンスリー・ライブ。その他、各地でのライブやイベントも続々決定。

コレクターズ オフィシャルサイト
http://www.wondergirl.co.jp/thecollectors/

古市コータローのBRILLIANT DAYS 
http://www.prosoundcommunications.com/kotarofuruichi/

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