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2010.01.15UP

来日記念『ボブ・ディランのアート作品』

この3月、9年ぶりの来日公演が決定したボブ・ディラン。しかも今回はディラン自身の提案で実現したという奇跡の初ライヴハウス・ツアー(東名阪のZEPP=全12公演)とあって、ファンにとっては嬉しい反面、セットリストも日替わりが確実なことから、なるべく毎日観たくてもなかなか簡単にはチケット入手できないのが悩みの種に違いない。

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そんなディランの来日公演を記念し、今回はこれまでほとんど語られることの無かった彼のアート作品(水彩画・ドローイング)を紹介したいと思ったのは、たまたま去年の夏、ロンドンのボンド・ストリートにあるギャラリーで開催していたボブ・ディランの個展を見る機会があったからだ。

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ボブ・ディランと絵画と言えば、恐らく多くのファンがまず最初に思い浮かぶのは、1970年にリリースされたカヴァー曲集『セルフ・ポートレイト』の自画像だろう。自ら描いた自画像をアルバムに使うくらいだから、当時からそれなりに自分の絵に自信があったのだろうが、まさかロンドンのギャラリーで個展をやるほどたくさん絵を描いていたとは想像もしていなかっただけに、ショー・ウィンドウに名前を見つけた時は「あのボブ・ディランがロンドンで個展?」と、すぐには状況を理解できなかったほどだ。

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とは言えそこはロック好きのアート好き。迷うことなくそのままギャラリーに入り、20点ほど展示してあった作品を見ているうちに、これはあのボブ・ディランの作品に間違いないと確信したというわけだ。例の自画像は油彩画で、展示してある作品は水彩画とそれを元にした版画という技法の違いこそあれ、驚いたのは40年も前の作風と最近の絵のテイストがさほど大きく違っていないことだった。作風やテイストというのは対象物の捉え方、表現の仕方と言い換えてもいいが、これだけ自分のスタイルを持っているのはなかなか凄いことだと思う。

もちろん、ディランが本格的に絵の勉強をしたという話は聴いたことはないが、絵を描くことが好きなのは確かだろう。実際、持って生まれた才能だけで素晴らしい絵を描く人は少なくないが、ディランもそんな一人で、技術的なことや絵が巧いか下手かといったことより、独特の味=個性を素直に作品に反映できる能力や、訴求力ある作品にまとめ上げるセンスこそ真の才能と言うべきだろう。

ここに紹介するディランの作品は、89年から92年にかけてのアメリカ、ヨーロッパ・ツアー中に描かれたドローイングやスケッチを中心とする作品で、94年に『DRAWN BLANK』のタイトルで画集も出版されているものだ。それらの作品を基に、塗られていた色を変えて何種類かの別ヴァージョン版画を作るなど07年にリワークを施したのが今回のシリーズである。まずは07年の秋、ドイツで展覧会を開催したところ大好評を博し、08年と09年には『The Drawn Blank Series』と題してロンドンでエキシビジョンを開催。ともに各295部の版画はすぐにソールドアウトとなる大盛況で、辛口で有名なイギリスの美術評論家たちの評価も上々だったというから面白い。

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ディランの絵を見ていて連想するのは、アンリ・マティスとゴッホの作品との類似性で、デフォルメされた人物のシルエットや鮮やかな色使い、大胆な構図は、本人が意識しているかどうかはともかく、この2人からの影響を強く受けているのは間違いのないところだろう。その意味でマティス好きの僕からすればかなり好みの作風ではある。

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但し、原画の水彩画が一点約400万円前後、手を出せそうなエディション295部のサイン入り版画は一枚約19万円ながらバラ売りは既にソールドアウトとあって、現在入手可能な8点セットが約140万円と聞くと、欲しくてもそう簡単に買える代物ではない。

どこかのギャラリーの方、来日記念にボブ・ディラン・アート展でもやりませんか?

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保科好宏
(ロック評論家/コーディネイター)
長野県須坂市出身。著書に『ロック人名辞典』(共著/音楽之友社)『ザ・フー・ファイル』(監修/シンコー・ミュージック)などがある。趣味はロックと現代アート。
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