2009.02.19UP
福井県に敦賀という高速増殖炉でそこそこ知られた街がある。20年前は駅前商店街にレコードショップが一つ、続く本町商店街に二つ、さらにつながった神楽町商店街にも一つ。レンタルレコード店もあった。書店もその並びに三つ以上。僕が育った人口六万弱(当時)のこの街は日本海側の典型的な小都市だ。
現在は一書店を除いて、これらの店は全て無くなってしまった。建物が残っていても、放置された什器が僅かにガラスの向こうに見える物置状態だ。当時はとても大きく見えた入り口が、シャッターが閉まっている現在、とても小さく見える。
かつてschoolやmidi、ナゴム、ZTTのようなレーベルが出すCDや12インチシングルレコードがギッシリと並んでいて、立ち寄るたびに新譜があり、強烈に物欲が刺激されても金が無くて買えず、ひたすら欲しかった記憶が鮮明に残っているだけに、寂しさはひとしおである。
書店に関しては、商店街型の店舗に代わって郊外に大きめのチェイン店舗ができた。家電量販や玩具についても然り。大都市圏以外の人の生活が車中心にシフトし云々...は昔から言われてきたことで今更書くことでもない。確実に日本中にこのような街がたくさんあり、昔ながらの小売り店舗は言うまでもなく苦戦している。
当然今どきの日本ではAmazonを始めとするインターネット通販を使えば、ことエンターテインメントに関する限り殆ど何でも手に入る。最初から知っていれば、目当てのミュージシャンが決まっていれば、能動的に探すことができれば、とにかく手に入る。けど、元々それが欲しいと思う理由は、昔と全く変わらず他人とのコミュニケーションやメディアからの情報だ。しかし、現在のテレビ番組で洋楽をまともに紹介することは皆無であり、邦楽についてはその後ろにどうしてもコマーシャリズムがつきまとい、(子供にさえ)それがバレてしまっているため、能動的に取りにいかない限り、音楽が日常生活に入り込んでくることがない。この現象は既存メディアの弱体化による信用崩壊の副作用なのだが、副作用です。終わり。では済まない気がしている。
もう一つ、音楽だけでなく、イケテるものへの欲望がやみくもに強い(はずの)未成年は基本的にはクレジットカードが持てず、彼らにとってインターネット通販は極めて不便なのに、そっち方面ばかり発展して、実店舗が経営危機に瀕している。経済規模的には子供の消費は音楽市場をひっぱるほどにはならないのかもしれないが、このままでは親に内緒でスターリンのCDや鳥肌実のDVDを買うなんてことが出来なくなってしまう。僕にはこういう小さな機会損失は将来の芽を摘んでしまうように見える。まあ、これは決済方法の多様化で対応できなくはないけど。
つまり、普段は意外と意識してないことなのだが(少なくとも自分はこうやって書いてきて初めて言語化できた)、我々は残念ながら普通に生活しているだけでは「音楽」と全然仲良くなれない環境に居る。実際、CDマーケットはその規模を小さくしていて、ダウンロードマーケットはそれをカバーするほどには拡大していない。商業音楽経済は構造的な問題を抱えながら縮んでいるのだ。
という危機意識があり、キレイな解決方法として、そこらじゅうに音楽情報に触れることのできる場を作ってしまおうということを考えたことがある。
日本中の小さな街に音楽のブティックショップを作る。
共通材を多用し、店舗コストは最低限。
規模が小さいので店舗経営リスクも小さい。
ロストリスクも商品申告制とかで凌ぐ。
場合によっては仮設店舗で試してみる。
小さなスペースに「最新の」音楽が凝縮されている。
けどスタッフの趣味が丸分かり、みたいな。
一押しのジャンルは月毎にコロコロ替わるとか。
人通りの多いところを狙って出すんじゃなくて、わざわざそこに行きたくなるような。
カフェなんか併設しちゃったりして、いやむしろカフェそのものの方がいいかも。
そこのBGMを商品からいくらでも選べればいいね。
ハコが大きければバンド活動の拠点になれるかも。
配信やアルバムリリースなど、作品の発表をサポートできるかも。
そういうことは専門チームがグローバルサポートしたりして。
全店舗を横につないで商品を融通しあえば、美術館の回覧展の様にカタログを持ち回れるよね。
新しいブランドを展開したとしても実績とともに自然と育つんじゃね?
以前から温めていたこんな案を某社で実現すべく頑張ったのだが、
この二年ほどの展開を外から見るに、どうやら華麗にスルーされたようだ。
腰を据えてやれば成立すると思うんだけどなぁ。
音楽が要らなくなる日なんて来ないんだから。
というわけで、時々こういうエッセイを寄せることになりました。
よろしくおねがいします。
