

日本のロック黎明期、そして現代においても未だに最も〈過激〉と称されるロック・アイコンの一つである頭脳警察。69年に結成した彼らは、そのグループ名と多数の非日常的なパフォーマンス、時代ゆえか学生運動などの過激な思想活動とのリンクから、幾度となくアルバムが発売禁止に追い込まれてきた。国内第1次バンドブームといってもいい75年にバンドは解散、長いブランクを経て90年あたりから時代を象徴するような大事件(少年犯罪、911など)を予感するが如く再結成を果たしてきた。
結成40年の節目となる09年、頭脳警察はオリジナル・メンバー2人での再結成、18年ぶりの新アルバム・リリースを発表した。さらに、映画「感染列島」「MOON CHILD」などで知られる監督、瀬々敬久がメガホンをとったドキュメンタリー映画は、三部作・総時間なんと5時間強の、3年間に渡るレコーディングやライヴ、プライヴェートにまで密着した作品となっている。バンドの中心人物PANTAに再結成、映画のこと、いままでのこと、そして新作を含むこれからのことを聞いてみた。
取材・文:前田栄達/写真:かくたみほ

――久しぶりの再結成ですよね。
前回の再結成は01年6月9日から9月6日までの期間限定だったんだよね。もう少しツアーが延びていたらあの911の事件に引っ掛かっていた。だからツアー・タイトルを〈最終指令 自爆せよ!〉※にしなくてほんとよかったねって話をしてるよ(笑)。
※〈最終指令 自爆せよ!〉=頭脳警察の楽曲タイトル。91年のツアー・タイトルにも使われた。
――今回の再結成までの道のりを簡単に教えてください。
女子プロレスラーの長与千種のプロデュースとかしてたかな、元クラッシュギャルズの。その流れから長与が主催したGAEA JAPANのテーマとかを筋肉少女帯の内田(雄一郎)と2人で作ったりして。そのあとは制服向上委員会というアイドル・グループの曲を書いたり、まぁいろいろやっていて。そんなこんなの時期が10年間くらいあったのかな......遊んでたよね。
というか、なんで遊んでたかっていうと、"万物流転"(90年作『頭脳警察7』収録)って曲を書いてしまったから。あの曲はヘラクレイトスの有名な、「小川のせせらぎに足を入れてごらん。また出してごらん。ほら、さっきの水と違うでしょう」っていう、世の中移り変わっている、全てのものは流転していく、"Like A Rolling Stone"と似たようなもんなんだけど。日本でいえば鴨長明だよね。方丈記に出てくる「ゆく川の流れは絶えずして、しかももとの水にあらず」てやつですよ。
世の中はまた戦争かい、また不況かい......と非常に愚かなことばっかり繰り返して、(学生運動時代の)俺たちの世代が世のイニシアチヴをとったときには少しはいい時代になってるんじゃないかな? と思っていたんだけど結局さらに悪くなっている。〈なんだこれは!?〉ということで、基本、世の中なんにも変わらない、変われねえんだっていう逆説的な意味を持って"万物流転"を書いたわけ。そんな曲を書いてしまったもんだから、気力が失せてしまったんだよ。次に何かをやろうって気が起きなくなってしまった。

――なるほど。
で、それからしばしして佐渡山豊というフォーク・シンガーと、俺も佐渡山も、そして(頭脳警察の)TOSHIも寅年だから、寅年のやつを集めて沖縄のコザってとこで〈トラ・トラ・トラ〉ってイヴェントをやろうってことになって。
出演者の遠藤ミチロウと俺が大好きな「ノブはボクサー」という曲を歌っている瀬戸口修と3人で、沖縄のカフェで朝までお茶を飲んでいたら、瀬戸口がタルコフスキーという映画監督の話を出してきたわけだ。「僕の村は戦場だった」などの映画を作っている人だけど。そのタルコフスキーの作品の中に「サクリファイス」という映画があって、その映画が「世の中は愚かな如く同じことを繰り返す、しかし少しづつ変わっているんだ、いや、変わらざるを得ないんだ」という言葉で締めくくっているらしいんだよ。
そのとき別に"万物流転"の話をしていたわけじゃないし、俺はその映画は観てない。だけど、それでスーッと肩から力が抜けて、「そうか、大上段に振りかぶって新しいものを作ることばかり考えなくていいんだ。同じことを繰り返しても前にやったものとは絶対違うものなんだから、繰り返してもいいんだ」という根源的なことに気付いたのよ。それってライヴの基本概念だよね。そしたらものすごく気が楽になって、封印してた"万物流転"っていう曲を、今度は「少しは世の中がよくなっていきますように」という、小さな希望を持って歌えるようになったんだ。それからかな、また自分の音楽活動に戻ったのは。
69年にPANTA(ギター、ヴォーカル)、TOSHI(パーカッション)を含む4人でバンドを結成。政治的なメッセージを含んだ歌詞と、アジテーションを交えた過激なパフォーマンスによって話題を集める。発売禁止された作品も含め、6枚のオリジナル・アルバムを残し75年にバンドは解散。90年代以降は期間限定の再結成を数回行ってきたが、09年6月に初のマキシ・シングル“時代はサーカスの象にのって”をリリース、続いて18年ぶりのアルバム『俺たちに明日はない』を10月にリリースする。また11月には、06年以降の彼らを追った映画「ドキュメンタリー 頭脳警察」の公開も控えている。

『俺たちに明日はない』(写真上)
活動40周年目、18年ぶりのオリジナル・アルバム。シングル“時代はサーカスの象にのって”同様PANTAとTOSHIを中心に、現在のPANTAのバンド〈陽炎〉をサポートに迎えて制作されている。2009年10月21日 発売 JRDF-0019 ¥3,000(税込)
「ドキュメンタリー 頭脳警察」(写真下)
06年以降のPANTAの活動を捉えたドキュメンタリー映画。バンド〈陽炎〉結成~08年の頭脳警察再活動までに行われたライヴやレコーディングはもとより、プライヴェートにも密着した映画となっている。3部作となっており、合計時間は約5時間14分。頭脳警察のファンであり、「感染列島」「MOON CHILD」などで知られる瀬々敬久が監督を務めている。11月7日よりシアターN渋谷で公開。
