

80年代最盛期だったイギリスのインディー・シーンから出現した最大のバンドと言えばザ・スミス。インディー・バンドとしては異例、本国ではシングル・ヒットを次々に飛ばし4枚のアルバムで世界制覇をなした。このスミスのヴォーカリストとして、またソングライターとして、カリスマ的な人気を確立したのがモリッシー。若い心の悩みや葛藤、愛への熱望や社会の矛盾への批判や怒りなどを、ユーモア溢れる独自のスタイルで描き多くの心を捕えた。また少年時代からアンダーグラウンド・ロックやイギリスのカウンター・カルチャーに精通したマニアで、それがスミスの曲ばかりでなくCDジャケットやポスター、ビデオなどにトータルなイメージとして反映された。数年前はあのニュー・ヨーク・ドールズの再結成にも一役買ったほど。彼のロックにかける情熱は、筋金入りなのだ。
セックスやドラッグとは無縁でありながら、その生き様がまさに独創的にロックしている男こそモリッシー!! だからこそスミス解散から20年以上たった今も、彼の特別な人気は衰えることがないのだろう。
さて彼のソロ9枚目にあたる新作アルバム『イヤーズ・オブ・レフューザル』が完成した。2007年の終わりにロサンジェルスでジェリー・フィン(惜しくもアルバム完成後の夭折)をプロデューサーに迎えて制作された全12曲。今年50歳を迎える彼だが、孤独を受け入れどこか吹っ切れた潔さを感じさせる曲があるかと思えば、他の曲では音楽産業に対するお馴染みの皮肉と毒舌をふるい憤ってみたり・・・。年輪を刻んだロッカーの底力を感じさせる自信満々な内容になった。さてこのインタビューは、昨年12月ロンドンで行なわれたアルバム試聴会の直後に行なわれた。
取材・文/高野裕子
―― 今日の試聴会は、90%が男性で驚きました。まあファンを忠実に反映はしていないでしょうか、それでも30代以上の男性がモリッシーのファンというのは事実でしょうか。
試聴会に参加したのは、確立したライターが主だったからだと思うよ。現在のファンはとても若い。とにかく凄く若くて、これに対しては非常に嬉しく思っているんだ。今日の参加者はモリッシーのコンサートの観客を象徴しているとは思わないな。例えば、僕がステージに上がっても、凄く静かだったじゃないか。実のところ歓声がなくてがっかりきた、とうか・・。ライターや評論家でいる、というのは多分自分を抑えて、冷静になるということが必要とされるからなのかもね・・・精神の安定を保つのが重要というか。たぶん!(笑)
―― ところでアルバムはLAでレコーディングされていますが、現在LAに住んでいるんですか?
僕は今住所不定なんだ。どこにも住んでいない。旅し続けているんだ。家といえるところはないし、欲しくないんだ。移動し続けたい。
―― いつからそうしているんですか? 数年前ローマに移ったときから?
3年半前から。ロサンジェルスにあった家を売って、ローマに1年住んでいたんだ。その後全くルーツレスでいたかった。家の所有者としての権利にがんじがらめになりたくなかったんだよ。だから今はホテルからホテルへと移り住む生活をしている。
―― 今でも故郷のマンチェスターに里帰りしたりしますか?
イエス。最後に行ったのは数ヶ月前かな。でもあまり外出したりしないね。マンチェスターに帰ったときは、家族や親戚に会うだけで。市内に出ると、ローカル新聞に写真をとられて、不快なコメントを載っけられたりするから。出かける価値はないんだよ。
―― あなたの音楽の魅力の大きな要因はイギリスらしさですが、もう長い間イギリスに住んでいませんね。その点であなたの音楽の要素はどう変わったと思いますか?
確かに変わった。視野に広がりが出たと思う。地域的でなくなり、特定の場所に捕らわれないようになった。それに関しては自分でも嬉しく思っている。世界中いろんな所に興味深く目を向けることができるようになった。まああまり理解できないような地域もまだ幾つかあるが・・・。ずっと昔の過去の僕は全然そんな感じじゃなかった。僕は閉ざされていて、狭い世界に陥っていたから。
―― ただその世界に多くの人が魅了されたのも事実ですよね。
確かに、そうだね。怖いことに、全くそのとおりだった・・。そうだね。でもそれは永久に続かないし、僕は自分が変化したことをありがたいと思っているんだ。
―― 様々な土地を転々とする生活をしているそうですが、あなたが常に関心のあったイギリスのカウンター・カルチャーについては常に目を向けていますか?
まあ大体は把握していると思う。でも一時のように、詳しく知っているわけではない。カウンター・カルチャーを追ってくのはとっても疲れる作業だから。そしてその殆どは価値のないナンセンスだしね。だからそれにあまり時間を費やしたくないんだよ。あと素晴らしく意味のあるパワフルな作品というのは探さなくても、自然に出会えると信じてるんだ。
本名スティーヴン・パトリック・モリッシー 。1959年、アイルランド人の両親のもと、マンチェスターに生まれる。1982年から87年までザ・スミスのヴォーカリストとして活動。インディーズ・レーベルの「ラフ・トレード」よりアルバムを発表し、世界的な成功を収めた。バンド解散後はソロ活動を開始。『イヤーズ・オブ・リフューザル』は、約3年ぶり、9枚目のアルバムとなる。2002年にはサマーソニックで来日も果たしている。

モリッシー『イヤーズ・オブ・リフューザル』
2009年2月25日発売
通常盤:UICO-1162 ¥2,500(税込)
DVD付輸入国内盤:UCIO-9046 ¥3,800(税込)
