千嶋秩父

故郷が恋しい夜、秩父郷土料理と女将の笑顔に励まされ

 新橋駅烏森口から浜松町駅方面に歩くと間もなく、「割烹秩父」と書かれた店構えが目に入る。のれんをくぐり引き戸を開けると、着物に割烹着姿の女将が「お好きな席へどうぞ」と、笑顔で迎えてくれた。
 奥行きのある店内は外観から思ったよりも広く、椅子と小上がりの席に分かれている。いずれもどっしりとした一枚板のテーブルが置かれ、壁には手書きのお品書きのほかに、有名人と一緒に写る女将の写真が数枚。飾り気はないけれど、手作りの素朴な田舎料理を食べさせてくれる温かな雰囲気だ。椅子席に座り、まずはビールと女将さんおすすめの「鹿刺」、「こん刺」(こんにゃくの刺身)、そして納豆に山芋、おくら、きゅうり、中トロなどが入った「納豆造り」のオーダーをすませ、女将に訪ねた。「この店はいつ頃からあるんですか?」「オープンは昭和28年。当初は駅前ビルの中にあって、主人の母が女将をしていたんです」。現在の場所に移転したのは、44年。当初はすき焼き店だった業態を秩父郷土料理専門の割烹店へと移行し、そのときから現女将が店を受け継いだのだそうだ。「この辺りはかつて芸妓さんたちで賑わっていた街。ひと昔前は粋なお姉さんたちや歌舞伎語り、それに三味線の流しの人なんかも店に来てね」と、思い出を語る女将さん。肌艶もよく若々しい出で立ちだが、70歳を超えているというから驚いた。
 間もなく料理が運ばれた。「最初に鹿刺を、何もつけずに食べてみて」と女将に促され、一切れ口に運ぶ。「ウマイ!」きめが細かくなめらかでとろける感じである。そしてかむほどに味がある。ビールをごくり。次に鶉卵と生姜をちょっぴりのせてまた一切れ。う〜ん!これまた刺激的で、さらにビールをゴクリ。キンと冷えたラガーと素朴で力強い郷土の味。秩父が故郷というわけではないのに、すっかり田舎に帰ったようなほろ酔い気分で、いつのまにか女将を「お母さん」と呼んでいるわたくしなのでした。

千嶋秩父(ちしまちちぶ)

東京都港区新橋3-22-3

03-3431-5037

17:00〜23:00

日曜・祝日

VISA、JCB、DINERS他

平均7,000円

JR新橋駅より徒歩1分


女将に若々しさの秘訣を聞くと「お客様のお陰です」とひと言。こういう店があるから、今夜もまっすぐ帰れません。 おすすめは「鹿刺」1,700円、「こん刺」800円、「納豆造り」1,500円のほか、「猪鍋」(4月からはしゃぶしゃぶ)をはじめ、秩父名物の「しゃくし菜漬」や「秩父そば」など。

ラガーのうまいお店

飲酒は20歳になってから。飲酒運転は法律で禁止されています。
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