紀文寿司


浅草で、老舗の江戸前寿司を味わう

 浅草にある「紀文(きぶん)寿司」へ行った。驚くなかれ、このお店の創業は、なんと1903(明治36)年、100年以上の歴史を誇る、浅草でも指折りの老舗江戸前寿司店なのである。
 お店はというと、雷門をくぐって仲見世を歩き、1本目の柳小路を左折したこぢんまりとした通りにある。が、その存在感はハンパじゃない。まず店構え。めちゃめちゃ趣きのある木造の一軒屋で、“古きよき時代”の面影を色濃く残している。さらに、のれんの文字が“司寿文紀”と右から左に書かれていることからも、このお店の長ーい歴史を伺い知ることができる。
 さて、今回訪れたのはランチタイム。お店に入るなり、「いらっしゃいませぇぃ」と、とっても穏やかなご主人が、笑顔で迎えてくれた。
 私は、重厚なひのきの1枚板のカウンターに着席し、まずはメニューを拝見。「寿司」と「ちらし」がそれぞれ<並><上><特上>の3種類ずつ、さらに「鉄火丼」(3,990円)、「鉄火巻」(2,625円)、「のり巻」(1,575円)、「お吸物(はまぐり)」(時価)と続く。そしてその横には『焼魚、煮魚、椀物、おつまみなどご希望に合わせご用意いたします』との文字。
 私は、「上ちらし」(3,360円)をいただくことにした。
 待つこと約12分、「ちらし」到着。直径20センチほどの円形の重箱の中には、それはそれは色つやのよろしいマグロやイカ、タコ、ホタテ、コハダ、アナゴ、カズノコなどといった魚介たちが、すし飯の上に堂々と鎮座しておられる。なんでもこのお店では、魚の脂肪が酸化して味が落ちるのを防ぐため、魚はすべて注文が入ってからおろし始めるらしい(大きな魚の場合には、片身の皮をつけたままにしておいて、使う分だけをそぎ切りにするそうです)。これは、口で言うのはカンタン。しかし実際は大変な作業。さらに、水は約45.5メートルもの深さから良質の地下水を汲み上げて使用していたりと、そのこだわりは細部にまで至る。これらはすべて、“生の魚本来の味を活かす”ためなのだそうだ。なるほど、おそろしく手のかかる作業があってこそ、江戸前の寿司職人だからこその、本当に美味しい魚を味わえるのだなあと、「ちらし」をいただきながら、ラガー片手にしみじみ実感した私でありました。
 ちなみに、私が「さぞ大変でしょうね?」と聞くと、ご主人は笑顔で、「いやいや、遊びでやっていますから(笑)」と。
 聞けば、このお店には、家から1時間以上かけて訪れる常連客も多いという。手間暇かかった仕事があってこそ味わえる、“ホンモノ”の魚の美味しさ、そして、それを“遊び”といってのけるご主人のお人柄。これこそが、多くのお客さんが、はるばる「紀文寿司」に行こう!という“キブン”になる所以なのだろう。
 実は私、「ちらし」の味が忘れられなくて、2週間後にまた食べに行きました。

紀文寿司(きぶんずし)

東京都台東区浅草1-17-10

03-3841-0984

月〜土曜 ランチ12:00〜14:00(L.O.13:30)
ディナー17:00〜21:00(L.O.20:00)
日曜・祝日 12:00〜19:30(L.O.19:00)

水曜

平均7,000円

ほとんど可

東京メトロ銀座線浅草駅より徒歩3分


創業1903(明治36)年、100余年の歴史を誇る老舗中の老舗。魚本来の味を引き出すためには、手間を惜しまない。写真は「上ちらし」(3,360円)。その他、<並>が2,520円、<特上>が3,990円。また、「寿司」は<並>が2,310円、<上>が2,835円、<特上>が3,570円。その他、予算に応じてさまざまな魚料理を楽しませてくれる。

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