


北の町からはすっかり雪便りも届き、鍋の季節です。今回「味の継承」でご紹介した葱鮪(ねぎま)鍋は花のお江戸、庶民たちの定番でした。「ねぎまの殿様」っていう落語があるぐらいで、昔は庶民が行く一杯飲み屋でもこの葱鮪鍋はひんぱんに食べられていたそうです。その匂いがいいのなんのって。落語に出てくる殿様は、その匂いにひかれて立ち寄り、美味しさに驚いてしまうわけです。で、当時の一杯飲み屋は樽の腰掛けにお客が座っていたみたいで、ねぎまの殿様は、お城でねぎまを作らせ、樽の腰掛けまで用意させてしまうわけです。このお話、背景は雪見なんですよ。
熱々の鍋にネギが浮かぶ。マグロも浮かぶ。シンプルで綺麗なものである。まずは、熱々のマグロをフウフウしていただく。醤油の味がほんのりとし、マグロってやっぱり旨いんだよね、刺身や握りもいいけどたまには鍋だよね、なんて言いながら、ラガーをいただく。ここまでは何の問題もない。次にネギをいただく、ここからです。ネギのなかから熱い汁があらぬ方向へ飛び出してくるのだ。この熱いのを我慢しながら「鍋にしたときのネギは、鉄砲って言ってさ、ほらアジジでしょ」と言いながらいただく。

「鉄砲ってさ、ほら熱い弾が飛び出してくるでしょ、だからネギは鉄砲っていうの、アジジジジィ」
すると家人は言うのである。「毎回同じことを言ってるよ」と。だけど「しょうがないじゃん、ネギは鉄砲なんだから」としか言い返しようがない。皆さんもそういった、同じ事を何度も言ってしまうクセというか何というか、そんなのありますよね。お寿司の出前なんかとると、「そういえば、醤油はムラサキって言うんだよね」とか。
さあ、今夜あたり江戸の定番鍋を、あなたの定番のキリンラガーと一緒にいかがですか?(今回は決まったかな)