


![]() |
||||
田中章弘さんは、1954(昭和29)年大阪府生まれのミュージシャンだ。山下達郎さん、井上陽水さん、寺尾聰さん、松任谷由実さんなど、日本を代表するアーティストのレコーディングやツアーにベーシストとして参加し、そのキャリアは30年以上。安定したベース・プレイが、アーティストはもちろん、多くのファンからも支持され続けている。
「ベースを弾いていると、ネックやボディを伝って全身に音が響いてきて、だんだん体と一体化していくような感覚になるんです。だから、ぼくにとっては楽器というより、もう体の一部のようなもの。『こうやって弾こう』って頭で考えるよりも先に、体が動いています(笑)」
田中さんが初めてベースを手にしたのは、中学2年生のとき。ロック好きの友人たちとバンドを結成したことがきっかけだった。そしてここから、田中さんの“ベース人生”が始まる。
中学時代は、暇さえあればバンドのメンバーとクリームやジミ・ヘンドリックス、ビートルズなどの曲をひたすらコピー。また、上達するスピードも早く、中学生にして深夜のラジオ番組「MBSヤングタウン」のオーディションに合格。一躍、学校で“有名人”となった。
さらに、高校生になると「春一番」(70年代に大阪で開催されていた野外コンサート)や「中津川フォークジャンボリー」にも出演。サポートメンバーとしてではあったが、はっぴいえんどやはちみつぱいなど、蒼々たるアーティスト
たちと同じステージに立っている。
「初めてはっぴいえんどを見たときは感動しました。日本語で、なおかつリズムもよくて。度肝を抜かれましたね」
そして1975(昭和50)年、20歳のときに東京へ。それは、田中さんが高校生のときに“度肝を抜かれた”はっぴいえんどのギタリスト、鈴木茂さんに誘われての上京であった。
「はっぴいえんど解散後、鈴木茂さんの新たなバンド(鈴木茂とハックルバック)にメンバーとして誘われたんです。僕にとってはもう、願ったり叶ったりでしたね。『おおスゲー、あの鈴木茂さんが呼んでくれてる!』って(笑)」
以後、田中さんはティン・パン・アレー、細野晴臣バンドなどのツアーにも参加。同時に、スタジオの仕事も数多くこなし、ベーシストとして第一線で活躍するようになる。ちなみに、松任谷由実さんのツアーでは、1983(昭和58)年の「リ・インカネーションツアー」から現在に至るまでの25年間、レギュラーメンバーとしてベースを担当。田中さんは、25〜30もの楽曲を、自分が納得いくまで頭と体に叩き込み、本番のステージに立つ。このスタンスは、昔も今も変わらない。
「ベースは、音楽のボトムを支える楽器なので、そこがしっかりしないとメンバー全員に迷惑が掛かってしまうんです。また、全く同じように弾いても、弾き手の性格や、そのときの気持ちが音に表れるんですよ。だからこそ、基本に
忠実に、そして、一音一音に心を込める。それがベースを弾く難しさであり、また、最大の醍醐味でもあると思いますね」
さて、そんな田中さんのお気に入りのお店が、神奈川県・川崎市にある「酒彩 羽々和」。田中さんは、ツアーで全国各地を飛びまわる忙しい生活を送っているが、たまに自宅に戻ってくると、必ずといっていいほどこのお店を訪れるそうだ。
この日も、好物のレバ刺や魚の刺身を食べながら、美味しそうにラガーを飲む田中さん。最後に、ベースを始めた頃の思い出を懐かしそうに語ってくれた。
「バンドをやることになって楽器専門店に行ったら、フェンダーの69年製のジャズベースがショーケースの中に飾られていたんです。それを見て『うわぁ、すげえカッコいいな』と。そのルックスに一目惚れして、僕はベースを始めました。もちろん、当時は中学生で、とても手が出せず別の安いベースを買ったんですが、そのあとも毎日のように楽器専門店に行って、ショーケースの中を眺めていましたね。『いつかこんなベースが似合う男になってやる!』と(笑)」
それから、月日が流れること40年…。田中さんは現在、フェンダーの69年製のジャズベースを愛用している。
この「酒彩 羽々和」は、自宅から近いこともあって、ひとりではもちろん、家族でもよく利用させてもらっています。
店名の「羽々和」は“うわぁ!”、また反対から読むと“ワハハ”。つまり「お客さんが驚くような美味しい料理を提供して、いつも笑い声が絶えないお店でありたい」というご主人の思いが込められているんですが、その店名の通り、刺身に焼き物、揚げ物、サラダ……、本当に何を食べても美味しいですよ。
中でも、特に僕が好きなのは「和牛レバ刺」。このお店に来たら、必ず注文しますね。また、ご主人が市場で仕入れてくる新鮮な魚の刺身もおすすめ。いつも、「今日はいいナニナニが入ってますよ」とご主人に教えてもらい、盛り合わせにしてもらっています。さらに、ご飯ものや一品料理なども充実していて、和食が好きなぼくにはピッタリのお店です。
そして、料理の美味しさをさらに引き立ててくれるのが、キリンラガー。“昔からの王道”っていう感じの、ビールらしいビールの味が好きですね。

1954年大阪府生まれ。「鈴木茂とハックルバック」に参加するため20歳で上京して以来、数々のアーティストのレコーディングやツアーにベーシストとして参加。なお、松任谷由実のツアーには、25年間レギュラーメンバーとして参加している。