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2010.02.03UP

新宿ゴールデン街「クラクラ」

 ゴールデン街2軒目は「クラクラ」だ。狭い階段を上った2階。オーナー外波山文明さんは劇団俳優で、演劇好きのおいらとはおなじみだ。今日はまだご出勤してこない。カウンターに立つ若いお姉さん絵理香さんは、大学時代にここに来てゴールデン街の雰囲気が気に入り、志願して働かせてもらうことになった。今年で2年目という。ここは少し昔、すでに有名になっていた作家の俵万智さんがアルバイトに立って、出版関係者の話題になり、「ひとつ見てやれ」と冷やかし客でにぎわった。
 焼酎お湯割で一杯やっていたが、奥の団体客の「日本酒はないの」という注文に「これしかないんですが」と出したのは、なんと福島の「大七・皆伝」。燗酒の最高峰といわれるものだ。「すごいのがあるじゃない」「そうなんですか、お客さんのオミヤゲなんです」。どうやらあまり価値を知らないようだ。「こんないいの出すことないよ、オレにだけ出せ」と言ったがダメ。「燗温度は44度」詳しく指定したができるかな。しばらくして届いたのはウイスキーのロックグラスに熱燗で、これは情けない。徳利盃のセットはないのだ。まあ、仕方がない。
 ゴールデン街の木造二階建ては基本が薄い仕切りの四軒長屋で、「クラクラ」は珍しく隣りの二階が空いて壁を取り、ログハウス風の続き部屋をつくって狭苦しさがない。おいらはここに一人で来ていた歌手の前川清さんと飲んだのが思い出だ。喉が大切なお仕事だけに終始マスクをかけ、飲む時だけ上げるのがなんとなくおかしかった。後においらの居酒屋DVDをお送りするとサイン入りブロマイドのお礼状をいただいた。
 「やあ、遅くなっちゃった」と作務衣姿の外波山さん(通称トバさん)登場。次の芝居の稽古中という。店内はいろんな演劇公演のポスターがぎっしり貼られ、演劇・映画系の客が多く、大柄の美人の絵理香さんは女優にスカウトされるかもしれないナ。カウンター端に鎮座するのは、ボクサー上り、とぼけたキャラクターで人気だったコメディアン・たこ八郎の胸像だ。たこさんは死してこの店に居着いたのだ。 

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(写真左)クラクラ玄関(中)大柄美人の絵里香さん(右)たこ八郎胸像



「クラクラ」

新宿区歌舞伎町一丁目 ゴールデン街G2通り 
電話03-3209-3660
http://homepage2.nifty.com/tubakigumi/tubaki-nennpyo.html

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太田和彦(アートディレクター/作家)
資生堂宣伝部デザイナーを経て独立。デザインと並行して日本各地の酒場を訪ね歩き、『ニッポン居酒屋放浪記』など多くの著作にあらわす。最新刊『太田和彦の居酒屋味酒覧・第2版』(新潮社)は全国の名居酒屋を網羅した集大成。出演のCSテレビ・旅チャンネル「全国居酒屋紀行」は9年目に入り「日本百名居酒屋」として放送中。
新刊『愉楽の銀座酒場』(文藝春秋/1700円)はバーを中心に銀座の 酒場73軒を取材した力作。
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