2009.12.22UP
12月になり、街がいつもと違う表情になる。
夕暮れになるとイルミネーションが瞬く。
たくさんの人混みの中を、その一人になって歩くことが幸せな時もあり、
ものすごく淋しい時もある。
その中に溶け込むことが出来る時もあり、遠くから眺めている時もある。
私もそんなちょっとばかり切ない気持を抱きつつ、イルミネーションを観て
過ごしたものだ。
そうやって続いた表参道のイルミネーションは、11年前に突然中止された。
いろんな理由があったらしいけど、その時は、欅(ケヤキ)の並木を守るためなのかな、
と思っていた。
多数の電球を木にからませることは、その熱を直接木が受け止めることになり、
大きなダメージになるだろうし、消費電力も大きい。
その後も他のいろんな場所で、イルミネーションが話題になったが、
それは横目で眺めることにしていた。

都会の街路樹には、もともと大きな負担がある。
根を伸ばすための地下には地下鉄が走っていたりする。
コンクリートの歩道と車道に挟まれて、ゆったりと呼吸することができない。
そんな中で、町会や商店界の人たちはどんなことをしているのだろうか。
欅(ケヤキ)の数は163本。東京都の建設事務所が8年に一回、欅のチェックをする。
その合間を縫って自分たちで、一本一本、欅を観る。
何人かの樹木医が、弱っているものから順々に土壌の改良をしたり、
空気穴を作ったりする。ゴミが打ち捨てられると、鼠が繁殖して根を痛めるので、
徹底的に掃除をする。
さまざまなボランティアグループが活動している。
「クリーン・バスターズ」「グリーン・バード」「美容部会(日本一美容院の多い
ところでもある)」、こういうグループが日曜日を除く毎日、清掃をしている。
イルミネーションの期間中は、これに地元の8つの町会と欅会の会員が、日曜を除く毎日
作業に加わっている。
もちろん、街を訪れる人たちの意識も変わってきてゴミやタバコのポイ捨ては
激減しているそうだ。
また、大事な日光が欅に降り注ぐように、そして並木の景観を守るために
30 メートル以上の建物は禁止されている。
今年の7月、欅会は年末の表参道装飾イベントのコンペを行った。
その中にひとつ、ある女性デザイナーから、欅のイルミネーションのモチーフが
出てきた。
もう二度とやらないだろうと思っていたイルミネーション。
欅会のみんなはドキッとしたそうだ。
11年間試行錯誤して、中止の際の様々な誤解やら何やらの傷も癒えて、
出来るだけ欅に負担をかけない方法で、表参道らしいイルミネーションでやってみようか・・・
ということになった。
デザイナーの長谷川喜美さんは当初はそのような事情を知らずに応募したという。
決定後いろいろ話しあって、アイデアは進化していった。
LEDも直接木につけるのではなく、やや離して設置する。老木やコンデションに
問題がある木には設置しない。
ところどころに、欅の芽を象徴するオブジェを置く。

イルミネーションがついた夕方、友人と歩いてみた。
ダメもとで、表参道ヒルズの「トラヤ・カフェ」に行ってみたら、ラッキーなことに
席が取れて、「菊プー茶とプーアール茶入り白玉葛汁粉」を楽しんだ。
原宿、千駄ヶ谷は緑の力に恵まれている。
代々木公園、明治神宮、新宿御苑、外苑と広い緑地ばかりではなく、
住宅地の緑地、街路樹の下に生える植物まで、力があるような気がする。
表参道の欅も、元気でいてほしい。
そして年に一度、イルミネーションというロマンチックな衣裳をつけることを
許してもらいたい。

1995年の原宿駅は屋根にプレゼントの箱のイルミネーションをつけていた。

1970年代の表参道。
20代の私は、必死に、楽しく、毎日を過ごしていた。
