2010.03.15UP
ある海外ロケのこと。
北京で撮影ということで飛行機に乗り、その機内誌で、内蒙古の
記事を観たディレクターが、「ここまで行ってしまおう!」と
決意して、本当に行ってしまったことがあった。
ドキュメンタリーではなく、コマーシャルの仕事なのでので、
こんな自由さはきわめて珍しいことだった。
もちろん、北京では、中国の映画界のコーディネイターの方たちが
大いに努力してくれたのだけど。

内蒙古の古都、フフホトではお寺に祭られた極彩色の巨大でセクシーな仏さまを
観た。大勢の人々が歌う不思議なホーメイがうねるようにその建造物を渦巻き、
響き渡っているのを聴いた。
こういうところにまた来ることができるのだろうか・・・それとも生涯で一回のこと
なのだろうか...と思う。
それから何百キロとバスで走り、遊牧民の子供たちの寄宿舎付きの小学校で
撮影した。

小学校は、戦後の田舎の小学校を知っている私には、なつかしい風景だった。
黒板の前にあるちいさなダルマのストーブ。ブリキの煙突があるけれど、
不完全燃焼の石炭から出る煙が教室に充満して、子供たちは常に小さな咳を
している。
ストーブの上にはお弁当などをおいて温められるようになっている。
子供たちは下着だけでは寒いので、同じサイズの綿入りの服を何枚も重ね着していて、
着ぐるみのようにぱつんぱつんだ。
お風呂に入る習慣があるのか、ないのか、垢がこびりついている。
でも一様に元気で可愛らしい。
撮影2日目になると、ある女の子が、率先して私の作業の手伝いをしてくれる。
昨日じっと見ていたのだろう、アイロン用の水を持ってきてくれたり、
次々とやってくれることは、東京にいるアシスタント並み。
子供の頃って、女の子の方が断然オトナなのだ。こういう場合も男の子たちは
ワイワイガヤガヤしてるだけで、この女の子の指示に素直に従っている。
この利発な子を原宿に連れて帰ったら、すぐにラフォーレに馴染んじゃうだろうな、
と思う。



楽しい撮影が終わって、夕方になった。
あれ、ディレクターの姿が見えない・・・と思ったら、
子供たちと別れるのが辛くて、ひとりバスの座席にうずくまっていた。
私のお気に入りの女の子とも、キュートで幼くて人気を博していた
丸坊主の男の子とも、どこかからまぎれて入ってきたピンクの服の
小さい女の子とも、さよならだ。
バスに乗り込む前に、ヘアメイクの女性が、「みんな、空をみて!」
と叫んだ。
日本で見るより数段大きい星が、青さが残っている空いっぱいに
びっしりと輝いていた。
